ギネス世界記録 特別インタビュー: 上地結衣選手

“試練を乗り越える根本には「楽しい」という気持ちがあったと思います”

書籍『 ギネス世界記録 2017 』掲載!

車いすテニスの世界において、21歳135日、最年少で年間グランドスラムを達成するという偉業を成し遂げたのが、上地結衣選手。11歳で車いすテニスに出会い、プレイするなかで、多くの喜びに出会ってきた彼女が、どのようにして全豪、全仏、全英、全米全てを制覇するに至ったのか? 過酷なスポーツの世界の頂点に登り詰めた彼女のスピリットを聞きました。

この度は、ギネス世界記録の認定おめでとうございます。「女子車いすテニスにおける最年少での年間グランドスラム(Youngest Female Player to Win a Wheelchair Tennis Calendar Grand Slam)」という記録に認定されることになったわけですが、認定されてみてどのような気分でしょうか? 

『ギネス世界記録』の本は有名で色んなところで見聞きしたことはありましたし、ギネス世界記録のニュースは、テレビやネットニュースでよく流れてきていたので、もちろん知っていました。でも、自分とはかけ離れた世界の話だと思っていて、身近なものだと思っていなかったので、今回、自分が認定されると聞いたときは、とてもビックリしましたし、光栄に思いました。

ギネス世界記録についての印象はどのようなものだったのでしょうか?

「こんなん挑戦するがおるんやぁ」って、テレビみて驚いてましたね。

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世界の頂点に立った上地選手にとって、テニス人生において、「世界を目指そう」と思った瞬間は、どんな瞬間だったのでしょうか?

私の場合、最初は、姉の真似をしてテニスをやりはじめただけでした。その頃は、「家族と一緒にテニスを楽しめたらいいな」「体を動かせて楽しいな」と思っていただけだったのです。それが競技指向のテニスに変わったのは、同じ車いすテニスクラブに所属している方で、パラリンピックで活躍している方の競技映像を観てからでした。同じ左利きの選手だったという共通点もり、憧れの選手だったので、「いいなあ」「格好いいな」と思って、気持ちが競技指向に向いていき、大会に出るようになっていったんです。でも、それでも、その頃は、パラリンピックを目指しているというわけではありませんでした。

はじめてその憧れの選手の映像をご覧になられたときには、世界の壁、世界のレベルについて、どんな印象をお持ちになられましたか?

そのときはまだ、大会に出るつもりもなかったので、ただ、格好いいと思っただけでした。でも、その映像に火を付けられて、小学校6年生、中学校に入った頃から、国内の大会に出るようになって、中学校3年生からは、海外の選手と試合をするようになったり、海外に行って試合をするようになったりして、だんだんと世界を感じるようになっていったんです。「世界の壁」と考えて、上を見たらキリがありません。だから、私の場合は、そういうレベルの高い選手たちとプレーができることは、むしろ「喜び」だったのだと思います。「世界の壁」を感じるよりも、「そんなトッププレイヤーの選手と試合ができる」という嬉しい気持ちの方が大きかったですね。

それでは上地選手にとって、世界に至るまでのプロセスは、どのようなプロセスだったのでしょうか? その道において、「努力すること」「挑戦すること」は、どのような意味を持っていたのでしょうか?

自分はこれまでに色んなことに挑戦してきました。障害を持って生まれてきたということに関しても、たくさんの悔しい想いもしてきました。でも、そうしたことを乗り越える根本には「楽しさ」「楽しむ」「楽しい」という気持ちがあったと思います。それは、シンプルに「テニスが楽しい」「友達と遊ぶことが楽しい」という気持ちです。テニスをずっと続けてこられたのも、一番には「楽しい」という想いがあるからです。「楽しい」からこそ、努力もするし、挑戦もできる。努力をして技を身につけていくのも楽しいですし、プレーをするのも楽しい、それから練習の後、パートナーの選手とおしゃべりするのも楽しいです。私が「努力」「挑戦」をしていくことにおいて、「楽しい」という気持ちはとても大切なものだと思っています。

世界一を目指すということは、何かをあきらめたり、捨てたりしなければいけないのかな?と思ってしまうのですが、上地選手の場合には、そういうことはなかったのでしょうか?

それは、本当によく言われるんです。同世代が勉強したり、遊んだり、恋をしたりしているときに、テニスばかりをする生活って、大変じゃないの? 遊びたいと思わないの? って。私の同級生でもプライベートを楽しんでいる子もたくさんいます。でも、自分は自分で、他の人が出来ない、全く違った経験をさせてもらっているんです。15歳で海外に行って試合をする。国際大会で一流の選手と試合ができる。こういう経験は、普通は絶対に経験できないことだと思うんですね。だから自分にとっては、我慢をしているっていうことは全くないし、同世代の人たちが遊んでいる話を聞いても全然気にならないです。とは言っても、オフの時や練習が終わった後など時間が出来たら友達と食事に行ったり出かけたり、遊びも思い切りやっている方だと思います(笑)。

自然体の自由な考えで全てを楽しむというスタンスで生活されているのですね。

私がこうしていられるのも、理解のあるまわりの人たちに囲まれている環境があるからこそなんだと思います。私の両親は、障害があるからといって、「運動すると危ないよ」とか「無理はしちゃ駄目」とか言う親ではなかった。今のコーチも、その他のまわりの人たちも、「私の意志」というものをとても尊重してくれてきたんです。このことについては、本当に恵まれていたと思います。

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ご自身の意志の結果として、国際的な選手と試合をし、世界の頂点に立つということは、大きな喜びなのでしょうね。

自分の場合は、「1位になりたい」「ランキングをあげたい」という気持ちよりも、「今、目の前で戦っている選手に勝ちたい」という気持ちで試合をしてきました。それをずっと続けていたら、いつのまにか1位になっていた。対戦選手との試合を1マッチ1マッチ楽しんできたら、結果、日本一、世界一になることができたんです。もちろん、積み重ねてきたものはあるんですけどね。

上地選手は、対戦相手のことを研究して、特徴やデータをノートに書いていると聞きました。

そう言われてしまうと少し違うような気がします(笑)私は、どんなことでも事細かに書き出してノートを作って相手の研修をして…というリサーチするタイプではなく、どちらかと言うと、こうしたら試合中にいいんじゃないかな、あの選手はここを攻めていったら有利になるかな、等を思いつきで書き留めていく感じですね。そういう点では、ルーティンや決め事をするのもあまり得意ではないんだと思います。。試合前もの準備も、特に順番やすることなどは決めずに、そのときどきで違っていると思います。

では上地選手にとって、「成長の糧」として大切にしているものはどのようなことでしょうか?

それは、やはり「楽しさ」「嬉しさ」ですね。勝つことも大事ですし、反対に負けることも大事です。負けたときの悔しい気持ちがあるから、勝ったときの嬉しい気持ちがわかる。負けたときには、やはり悔しい気持ちをバネにして、勝つ気持ちに向かっていけます。でも何よりもテニスを楽しむことが、自分の成長には必要不可欠なことだと思っています。

なるほど、2つの気持ちの幅を知っているから、次に向かえるわけですね。では、今後のご自身の目標やビジョンがあれば教えてください。

まずは、リオデジャネイロのパラリンピックで金メダルをとる。これは、ロンドンのパラリンピックに出場してからコーチと一緒に決めたひとつのゴールです。その後は、やっぱり東京パラリンピックでの連覇を目指して頑張りたいと思っています。

パラリンピックということがビジョンの柱にあるのは、何か理由があるのですか?

実は私、2012年のパラリンピックでテニスをやめようと考えていたんです。でも、ロンドンのパラリンピックが素晴らしくて、私がそこで受けた影響はそのあとの競技への考え方や取組み方などを変えるくらい大きいものでした。だからせっかくの時刻での開催の東京パラリンピックはロンドンパラリンピックよりも更にいいものになればいいなと思っています。海外の選手や若手の選手が、東京大会で自分の考え方が変わった!と言って貰えるような大会になったらとても嬉しいことですよね。そんな雰囲気づくりも自分が出来たらいいなと思います。

なるほど、そのバックグラウンドを知ると、より一層素敵な目標に感じます。でも、テニスをやめようと思っていたことがあったというのが、何より驚きでしたね。

私、小さい頃からすごく好奇心が旺盛なんです。だから、気になったことはやってみないと納得がいかない。海外遠征を経験して行くうちに、国際関係の仕事だったり、外国語の習得だったり、そういうことを勉強したいなって思うようになったんですよね。外国の大学にも行きたいし、興味のある仕事もしてみたい。でも今は、テニスを続けていてよかったなと思います。

本当に「楽しい」という気持ちを大切にされているんですね。では、最後にギネス世界記録の読者に向けてひとことお願いします。

なにか挑戦することを見つけるのは、とても素敵なことだと思います。ぜひ皆さんも何か見つけたら、楽しみながら続けてみてください。

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2016年9月8日発売『ギネス世界記録2017』には、様々な記録を収録しています。詳細は、コチラへ。

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