ギネス世界記録において、長寿の記録というのは、世界中で注目される記録カテゴリーとして知られています。今回の記事では、その長寿にスポットを当ててみたいと思うのですが、人間ではなく「猫の長寿、猫の年齢の世界一」というものを紹介してみたいと思います。ちなみに、本記事で紹介している写真はイメージ写真になり、記録の猫とは関係ありませんので御了承くださいね。


猫の最長寿記録~人間の170歳まで生きた世界一の猫

ギネス世界記録に登録されている人間の世界最長寿記録は、1997年に亡くなった女性で122才です。「ではっ!」ということで、その人間と一緒に暮らすペットの代表、犬や猫はどうなのか? 犬も猫も平均寿命はほぼ似たような年齢で、「犬は10才~13才」や「猫は15歳」と言われているのですが、犬の最長寿記録が29才であるのに対し、猫の最長寿記録はなんと、「38才」にまでなるのです!!

  • 記録名:       Oldest cat ever (最も長生きした猫) 
  • 記録:         38才3日(1967年8月3日~2005年8月6日) 
  • 記録保持者: Creme Puff (lived with her owner, Jake Perry) 
  • 国・場所:     アメリカ、Austin, Texas 

ギネス世界記録に登録されている最長寿の猫は、Creme Puff (クリーム・パフ、日本語で言う「シュークリーム」)という名前のメス猫で、上記のデータにもある通り38才と3日も生きました。これがいったいどれほど凄い記録なのか、ちょっと詳しく見てみましょう。


猫の平均寿命

先にも書いた通り、猫の平均寿命は、15才前後と言われています。但し個体差は大きく、室内のみで飼われているのか、屋外にも出る状態で飼われているのかでもかなりの違いが出ます。日本国内で平成25年度に行われた調査では、前者が16才であるのに対し、後者は13.2才でした(社団法人ペットフード協会調べ)。また飼猫でない場合、つまり野良猫の場合は、正確な統計値を求めるのは困難ですが、海外の資料によれば飼猫の約半分から3分の1ほどの寿命とされているようです。 


一方、猫の平均寿命は、ここ20年ほどの間に大きく伸びてきていると言われています。これは食事の改善や、人間と同じく医療の進歩によるところが大きいと推定されますが、それでも、冒頭のクリーム・パフの38才には遠く及びません。クリーム・パフは、その伸びているとされる平均寿命と比較しても、更に倍以上を生きたことになり、この長寿記録の凄さの一端が伺えます。


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※本記事で紹介している全写真はイメージであり、記録とは一切関係がありません。


猫の年齢と人間の年齢

猫は、最初の数年間で一気に成長します。そのスピードは人間よりも遥かに速く、そのために猫の年齢を人間に照らして考える場合には、単純に数字を掛けるのではなく、成長過程に合わせた調整が必要で、様々な換算方法が考えられてきました。 


例えば最初の一年で、猫は一気に人間で言う青年期まで成長します。そして次の一年の間に、人間でいえば立派な大人となります。そこで、最初の2年で一気に20代となるように計算した後、その先は1年を人間の4才分として計算するといったような具合です。 


また、人間と猫の寿命同士を比較することでも、大凡の対応年齢が得られます。例えば一般的には、猫の20才が凡そ人間の100才に当たるように計算するわけです。

それでは、クリーム・パフが生きた38才というのは人間にすると何歳に当たるのでしょうか?換算方法によっても少々ばらつきがありますが、上記のような方法で算定すると、なんと約170才にもなるのです。これは日本で言うなら、最後の将軍・徳川慶喜や福沢諭吉がつい最近まで存命していたのに匹敵します。海外なら、発明王トマス・エジソンが2015年現在まだ生きているようなものでしょう。ちょっと信じられないような記録ですね。しかし、驚きはこれだけにとどまりません。


もう一匹の長寿猫

実はクリーム・パフの飼い主ジェイク・ペリー氏は、Granpa Rex Allen(グランパ・レックス・アレン)という、これもまた長寿記録(34才2ヶ月・1964~1998年、人間の150才)を保有していた猫を飼っていました。

クリーム・パフは丸々と太った猫でしたが、グランパ・レックス・アレンは、コンテストでのチャンピオン歴も持つ、つるんとした独特の顔立ちとスタイルで有名なスフィンクスと言われる猫で、スリム体型でした。

つまりこの2匹の猫は、同時期に、なんと同じ飼い主の元で育てられていたわけです。



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長生きの秘訣はブロッコリーやクリーム入りのコーヒー!?

猫の寿命に影響を与える要因は多岐にわたりますが、中でも影響が大きいとされているものの一つが食事です。


私たちが一般的に飼っている猫は、学術的には「イエネコ」として分類されますが、同じネコ科の動物には、ご存知トラやライオンなどがあり、イエネコも含めて本来肉食動物です。つまり狩りを行うことで食事をする捕食動物で、筋肉質の身体や、大きな後ろ足でジャンプする俊敏性を持ち、これはイエネコにも共通する特徴と言えるでしょう。 


野良猫の場合は、ネズミなどの小動物や、時に小鳥やハトなども捕食し、生きるために必要なたんぱく質や脂質を取り入れます。飼猫の場合でも必要な栄養素は同じで、キャットフードでは、動物性たんぱく質などを多く摂取できるように工夫されています。 


一方、猫はほとんど汗をかかないこともあり、人間と同じような味つけのものや、多量の塩分、それにチョコレートやカフェインを含むコーヒーなどは代謝が難しく、特に有害とされています。

ところが不思議なことに、ペリー氏が愛猫に与える餌は、ベーコン&エッグ、アスパラガス、ブロッコリーそしてクリームたっぷりのコーヒーなど、一風変わった食べ物でした。長寿とこの食べ物の因果関係は不明ですが、世界最高齢の猫2匹を育てたジェイク氏の育て方が間違っていたとは、誰も言えないところでしょう。 


その他の長寿猫たち

クリーム・パフは、現在のところ2位以下の長寿記録をも大きく引き離しています。ギネス世界記録に残るデータで、その他の長寿猫(内1匹は前述のグランパです)を見てみると、次のような記録が存在します。

34才・Granpa Rex Allen(アメリカ・1998年)
34才・Ma(イギリス・1957年)
33才・Fluffy(オーストラリア・1981年)
30才・Beebee(カナダ・2001年)

( )内は没年

この他に、イギリスで36才まで生きたとされる猫がいますが、1939年のことで、残念ながらはっきりとした記録は残っていません。

一方、2015年現在生存中の猫については、「最も長生きした猫」とは別に最も長生きし「現存する最長寿の猫 (現在ている猫)」として、現在進行形の形で記録が保持されており、最長寿は25才となります。クリーム・パフの年齢に達するにはまだ13年も生きないといけない事になりますので、やはりクリーム・パフがいかに長生きだったかにびっくりさせられますね。


  • 記録名:      Oldest cat living 最も長生きし「現存する最長寿の猫 (現在ている猫
  • 記録:         25才339日(1989年8月1日~2015年7月6日現在) 
  • 記録保持者: Corduroy (lives with his owner, Ashley Reed Okura) 
  • 国・場所:     アメリカ、Sisters, Oregon


ちなみに今年の5月まで、この「最も長生きしている猫」の称号は、同じアメリカのカリフォルニア州に住む"Tiffany Two(ティファニーII)"が持っていて、その年齢27才9ヶ月は、主要ニュースメディアでも取り上げられました。

猫は9つの命を持つ

欧米で誰もが知っていることわざに"A cat has nine lives(猫は9つの命を持っている)"というものがあります。この言葉の起源ははっきりとはわかっていませんが、猫の危機回避能力が非常にすぐれているためであると言われ、シェイクスピアの有名な戯曲「ロミオとジュリエット」の一節にも、猫王が9つの命を持つものとして描かれています。それほどに、猫は本来強い生命力を持っているという事なのでしょう。

皆さんのお家の猫も是非長生きして、いつか日本からもギネス世界記録の申請をして頂けることを、お待ちしています。


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