7歳のころに観たスター・ウォーズにインスピレーションを受けたイギリスのエンジニアが、2トン級のロボットを制作し、ギネス世界記録に認定されました。

イギリス出身のマット・デントンさんが制作した、2.8 m x 5 m の巨大ロボットが達成した記録タイトルは「最大の乗ることができるヘキサポッド|Largest rideable hexapod robot」。重さはなんと2トンもあるのです!

「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」に登場する四速歩行ロボット『AT-AT』をみたマットさんは、大きな感銘を受けました。ロボットを使った特殊撮影、アニマトロニクスに興味を持ち、自宅で小さなロボットを作り始め、ついにはハリー・ポッターに登場するロボットを製作。そしてついに、彼のパッションに火をつけたスター・ウォーズのロボットを手がけるまでにいたりました。

そんな驚きの経歴を持つマットさんが作り、ギネス世界記録に認定されたヘキサポッド「マンティス(Mantis)」は、コックピットで操縦することができるのはもちろん、Wi-Fiを介して遠隔操作をすることも可能です。動力はパーキンス製の2.2リットル・ターボ・エンジンで、時速約1キロで走行することができます。

操作は2本の3軸ジョイスティックと28個のボタンで行います。その"頭脳部"はLinuxのパソコンで成り立っていて、各脚の動作を内蔵されたHexEngineソフトウェアで制御します。

世界一のヘキサポッドができるまで

ヘキサポッドの製作は2009年にスタート。それまでにマットさんはすでに20台のヘキサポッドを製作してきましたが、そのほとんどは直径50 cm 以下の小さなものでした。

ヘキサポッド作りのエキスパートとなったマットさんは、アニマトロニクス・エンジニアのジョシュア・リーさんと一緒にハリー・ポッターシリーズに携わりました。彼が作ったヘキサポッドは、なんと6脚歩行の亀になり映画に登場したのです!

その後、水中で使用する200トン級のヘキサポッド製作の資金を得ます。巨大なロボットで生じえる問題を把握するために、マットさんは今回ギネス世界記録を達成した1.9トンのロボットを作りました。

Mantis - Largest Rideable Hexapod

50 cm 程度のマシンを作るのと、5 m のマシンを作るのは大きな違い。「マンティス」が完成するまでにかかった期間は3年で、ここで紹介されているのも「マークII」です。初期号のマークIは、油圧システムの問題をはじめとした機械トラブルに見舞われたと、マットさんは言います。

hexapod under construction

「油圧システムの経験がほとんどなかったので、エンジンと油圧ポンプとタンクが一緒に働く方法を考えるのに苦労しました。」

例えば掘削機についているアームはたったの1本に対し、「マンティス」は6本もついています。つまり、油圧の回路も冷却も6倍必要になるのです。

「あらゆる分野のエキスパートにならなければならなかったので、夜中に読書をする日々が続きました。」

インスピレーション

Matt Denton with his Grandad

マットさんが歩行ロボットに興味を持ち始めたきっかけは、7歳のころに観た映画「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」でした。作品に登場する四速歩行ロボット『AT-AT』に驚かされたのです。

映画館を出てからも「マシンは、歩けるんだ」と思い続けるほど信じられませんでした。それが全ての始まりです。

そしてものづくり、特にマシン作りにのめりこんでいったマットさん。13歳のころにはあらゆるものを分解して、まるでフランケンシュタインのように2つのものを合体させたりしていたのだとか。

また、子どものころにやっていたレゴ® も、彼をクリエイティブにさせたと言います。「子どものころにやったレゴのセットは、想像力を沸き立ててくれたよ。あれがなければ、いまの僕はいないと思う。」

学校を卒業すると、電子工学の見習いとなり、テレビ番組「Space Precinct」や操り人形師のジム・ヘンソンの「ジム・ヘンソン・クリーチャー・ショップ」で、ロボットのソフトウェアを開発を担当しました。

その後マットさんは、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の製作スタッフに選ばれ、彼が施したBB8ロボットは賞をとるなど大きく評価されました。

BB8-hexapod

「子どものころにもし誰かが『大きくなったら映画製作に携わって、巨大な歩行マシンを作っている』と言われても絶対信じなかったはずです。そしてギネス世界記録に載るのはとても嬉しいこと。このタイトルを持てるのは最高です。」

Mantis - Largest Rideable Hexapod-1

常に新しくて面白いプロジェクトを探しているマットさん。現在は子どものころに楽しんだレゴ®テクニックに原点回帰し、巨大なレゴ®キットを3Dプリンターで印刷するプロジェクトを進めています。

いまのところ、ゴーカート(98ピース)、フォークリフト(216ピース)、ブルドーザー(372ピース、印刷時間はなんと600時間だったとか)などを作ったそうです。

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