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2018年、あるコレクションの数がギネス世界記録に認定されました。

それは『帯』。古裂美術工房の会長を務め、着物を含む日本伝統文化を教えている吉野孝子さんが所有する帯のコレクションで、記録は4,516本でした。コレクションは数だけではなく、江戸後期のものから現代に至るありとあらゆる種類であふれています。

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4000本以上もの帯を正確に整理して数えるのは至難の業。そのため記録挑戦はかなりの手間がかかりました。

舞台は、このために借りた名古屋市にある白鳥庭園の大きな茶室。袋帯を1本1本ビニール袋から出して積み重ねて数を計測します。一方で名古屋帯は胴体の部分が細くなっていて重ねると倒れてしまうので、ビニールに入れたまま計測。さらに帯に番号をふり撮影し、重複がないようにしています。

挑戦はオール女性で、立会いの証人も市会議員の鵜飼春美先生、愛知県会議員の中村友美先生、そして不正がないようにと、なんと愛知県警に頼んで女性の警察官に監視役をお願いしたのだとか!

20歳の頃から帯を集め始めた吉野さん。興味を持ったのは両親の影響が強かったとそうです。

「帯は錦と言って、錦を飾るという言葉があって、ここに凝縮する美学がある。簡単に選ぶものではない。似合うものを選ぶ。そういう考え方を教えてくれました。」

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いつの間にか膨大の帯の持ち主となっていた吉野さん。しかしそれは数が目的ではないと言います。

「昔の帯と今の帯の違いとか、柄の違いとかは、たくさんあったほうが生徒さんに教えやすいんです。例えば明治時代の佐賀錦という帯の帯芯には帆布という船の帆を張る木綿が使われていますが、日本人も洋装に変わっていくにつれ、帯も軽くなったり改良されていったんです。
しかしこのような変化を文献で知りえても、質感は分かりません。帯の良さや、着物との合わせ方を伝えるには、手に取って感じてもらえる実物が多くあったほうが良いと思ったんです。」

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より説得力を持って帯の事を教えたいーー。そんな思いで吉野さんは、ギネス世界記録に挑戦しました。今後も帯のコレクションを通じて、日本の美学の1つをより多くの人たちに理解してもらいたいと考えています。

私が小さかった昭和30年頃はまだ帯の方が重要とされてきました。でもその後、大正生まれの親たちが着物を着なくなり、着なくなると知識がなくなり、子どもだった私たちの年代が着る頃になると、着物に対する知識や思いがかなりなくなっていたと思います。

帯と着物、帯締め、帯揚げ、おぞうりをセットで考えなきゃいけない。TPOに合わせなければならない。だってファッションだから。正しい知識を身につけて、分かったうえで自分なりにアレンジしていただきたいと思います。

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帯のコレクションについては、今後も増やしていきたいそう。「まだまだ足りないと思っています。年齢が変わったり着るシチュエーションも変わってくる。1つの着物で帯を変えれば色々変わるという事をもっともっと教えていきたいです。帯が増えれば、その分もっと教えられると思っています。」