公式認定員インタビュー

第1回 : 石川佳織

日本人として初めてとなる公式認定員となって以来、世界中で数多くの記録認定の現場に立ち会ってきたのが、石川佳織です。今も、多くの記録認定に携わり、テレビ番組などでの認定証授与の機会も多いため、その場面を見たことがあるという人も少なくないのではないでしょうか。英国勤務を経て、現在、日本における記録認定の重要な役割を担う彼女に、「ギネス世界記録」について、「記録認定」について、そして、「自身のこと」についてを語ってもらいました。

石川さんは、日本ではじめての公式認定員だとうかがいました。

はい。元々、私は、ロンドン本社の記録管理部で公式認定員をしておりましたが、数年前に日本オフィスに移り、現在では、日本の記録管理部の部長を任されており、自分自身、公式認定員でありながら、日本国内における公式認定員たちの活動を取り仕切っています。

記録管理部部長、または公式認定員として、どんな想いで日々の活動に取り組んでおられるのでしょうか?

一番大切にしているのは、「公平さ」ですね。ギネス世界記録が生まれてから現在まで、無事「60周年」を迎えることができたのも、私たちが公平な立場から記録を認定してきたからだと思います。公式認定員として活動する私たちは、築いてきた信頼を裏切らないように、責任を感じながら毎回臨んでいます。

認定員の仕事を通じて面白いと感じる点はどんな点ですか?

私がこの仕事が好きなのは、世界一を目指す挑戦者の方々からパワーをもらうことができることです。記録の内容はバラエティーに富んでいますが、何か1つのことに夢中になれることは素敵ですし、挑戦する姿は、みなさん、キラキラ輝いています。

これまで数多くの記録挑戦に立ち会ってきましたが、どの挑戦にも異なるドラマがあります。そんな世界記録挑戦の瞬間に立ち会えることは、本当に光栄なことだと思います。

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ではその反対に、つらいと思うこともありますか?

もちろん、つらいことはあります。それを一番感じるのは、記録挑戦を失格にしなければならないことがあることです。挑戦者の皆さんがその日のために努力をされてきたことは、認定活動を通じて目の当たりにしているだけに、失格のお知らせをするのはつらいことです。

ただ同時に、これは忘れられがちなことなのですが、記録が更新される祝福の場面の裏側には、必ず自分の記録を破られてしまった人たちがいます。ですから、やはり公平に審査をすることはとても重要なことなのです。

何故、公平さが大切なのか、よく理解できました。では、その「公平さ」を探求しなければならない認定員となるためには、どんな能力、資質が必要になるのでしょう?

必須なのは英語力です。記録挑戦に関するルール(ガイドライン)は全て英語での作成となりますし、ロンドン本社をはじめ、他のオフィスのメンバーとのやり取りが多いため、バイリンガルであることは最低条件となります。

これに加えて、公式認定員は全員、専門のトレーニングを受けています。このトレーニングでは、「世界一とは何か?」というギネス世界記録の定義を徹底的に叩き込まれたり、タイムを測ったり、距離を測るような技能トレーニングを受けたりします。

「何がどのような観点から、どのように証明されて、記録になるのか?」、こうしたしっかりしたベースがあるおかげで、私たちは自信を持って審査をすることができるのです。ですから、私たちは、日々、記録について深く知る努力を欠かしません。ですので、私たち公式認定員が、ギネス世界記録の一番のファンだとも言えるかもしれませんね。

580_kaoruC一ファンという点から、ご自身の好奇心を元に考えると、どんな記録に惹かれますか?

自分自身、コレクター気質ということもあって、コレクションの記録には特に興味がありますね。記録保持者の方々が、「どのような理由でそのコレクションを始めることになったのか?」など、コレクション記録には、数字の裏に隠れたストーリーがあって、「これだけで1冊の本にできるのでは?」と思うこともあるくらいです。

例えば、現在の鉛筆コレクション(16,260本)の記録保持者の方が収集を始めたキッカケは、50年以上前、小学生の頃に担任の先生からもらった 1本の鉛筆だったそうです。また、シマウマグッズのコレクターの女性は、母親に半強制的にコレクションを決められたと言います。5歳の時に、「何か集めているものがあると、誕生日やクリスマスプレゼントを選ぶときに皆が楽で良いから」との理由から、動物園でたまたま買ったシマウマのぬいぐるみを元にコレクションがスタートしてしまったそうなのです。

コレクションの記録をカウントする際には、ときには十数時間をかけて無我夢中で膨大な量を数えなければならないケースだってあるのですが、こうしたおもしろいエピソードを聞けると幸せな気持ちになりますね。

では、認定員という立場から離れての質問です。石川さんが、日頃の生活で楽しまれていることには、どんなことがありますか?

食べ物ではありませんが、地ビールの研究をしています。これまで飲んだビールの種類は2,000種類ほどです。

きっかけは、ロンドンに住んでいた頃、よく行っていたベルギーで様々な種類のビールに出会ったことに始まりますが(販売しているビールの種類の多さによるギネス世界記録を持っている、ベルギーのカフェにも行きました)、日本でもたくさんのおいしい地ビールがあることを知り、日本全国で飲んだことのないビールに出会うと試してみるようになりました。

また飲むだけでなく、どのような人たちがどのような想いで、そのビールを作っているのかにも興味が広がり、見に行くことができる醸造所には見学に行くこともあります。

地ビールが本当にお好きなんですね。 

はい、好きですね。あと、私が生活の中で大切にしているものは、音楽ですね。音楽は聴くのも、自分で演奏するのも好きです。時間があるときは、掘り出しモノを求めて、中古レコード屋巡りをします。

3年前にロンドンから日本に移る際に、コレクションを大分整理したのですが、日本には良いレコード屋さんが多く、逆に枚数が増えてしまっています(笑)。集めたレコードを使ってDJもやりますし、ロンドンにいた頃は、自分でも音楽活動をしていました。最近また、ライブ熱が復活してきたので、日本でも何かはじめようと企んでいます。

石川認定員に関しては、「無類の猫が好き」という情報もありますね。

はい。基本的に動物はみんな好きですが、特に好きなのが、猫なんです。元々は、犬派だったのですが、友人が飼えなくなってしまった猫2匹を10年前に引き取ってからというもの、大の猫好きへと豹変してしまいました。

これまで最も長生きの猫として、38年と3日を生きたアメリカの猫の記録がありますので、ウチの猫にも「がんばって記録更新を目指そうね!」といつも語りかけています。ギネスワールドレコーズでは猫好きなメンバーも多いので、猫の話題で盛り上がることもあります。

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最後に、世界中を旅してきた経験豊富なギネス世界記録の認定員として、印象に残るエピソードをひとつお願いします。

そうですね。例えば、ロンドン本社で勤務をした時代の話です。あの頃の私は、ヨーロッパをはじめ、世界各国を認定のために飛びまわる日々を過ごしていました。だから、私のパスポートは入国審査で押されるスタンプでいっぱいに埋め尽くされていたのです。

そのため、空港での入国審査の際には、「国から国を頻繁に移動する怪しい人」として見られることが多かったのですが、入国目的を「ギネス世界記録の挑戦に立ち会うために来た」と告げると、どの国の入国審査官も、最初はびっくりした表情を見せた後で、「どのような記録なのか?」と興味を持って質問をしてくれるということがよくありました。中には、「僕は1日に何回スタンプを押せるかだったら自信があるヨ」などと冗談か本気かわからないことを言う人もいたくらいです。

ギネス世界記録がいろいろな国で親しまれていることがわかる、嬉しいエピソードですね。

だからこそ思うのですが、この地球上で「世界一」と認められるからには「公平さ」が大切になります。ギネス世界記録に挑戦する皆さんは、その「世界一」の重みというものをしっかり感じながら挑戦を楽しんでいただきたいと思います。