search person
close

チンパンジー研究の先駆者ジェーン・グドール、ギネス世界記録に認定される

By Adam Millward
発行済み

ジェーン・グドール博士は子どもの頃から、野生動物が彼女の人生に大きな役割を果たすと確信していました。

ドリトル博士ジャングル・ブックターザンなどの本を慣れ親しんできた幼少期のグドール博士は、10歳になると、いつかはアフリカで野生動物と一緒に暮らし、そこでのストーリーを伝える事を心に決めたそうです。

それから16年後、タンザニアのゴンベ渓流チンパンジー保護地区で霊長類の研究をするために旅立ち、夢を叶える事となったのです。それから多くの変化が訪れ、かつては保護地区だったゴンベの渓流は国立公園になり、1977年に設立されたジェーン・グドール・インスティチュートの活動範囲はさらなる広がりを見せています。

それらの変化があっても、ゴンベでの研究や保護活動の基礎は、いまでも変わっていません。58年続いているグドール博士の活動は「最も長く行われている野生霊長類研究|Longest-running wild primate study」に認定されました。

video

1960年、当時26歳だったグドール博士は、母と一緒に(当時イギリス政府はゴンベへの付き添いのない渡航を許可しなかったため)ゴンベに到着しました。そのジャングルには、「エコロッジ」のような快適な居住空間はありませんでした。

「元陸軍のテントを持っていましたが、それにはグラウンドシートは縫われていませんでしたので、蛇やさそりなど、ありとあらゆる生き物が出入りできる状態でした。そして案の定、その生き物たちは入ってきました。他にあったものは小さなキャンプベッド2つ。お風呂はキャンバスでできた1.5m2 くらいで高さは7.6 cmのもので、クックのドミニクがまきをくべて沸かしたお湯を注いでくれていました。いわゆるキッチンには壁がなく、ヤシの藁でできた屋根があっただけでした。」


チンパンジーから信頼を得るには、数か月かかったというグドール博士。突破口は、ちょっとした偶然な出来事から起こりました。

グドール博士はある日、深い熱帯雨林で距離の計算を誤り、毛繕いをしていた群に予想より近い場所に遭遇してしまいました。しかし驚く事に、チンパンジーは逃げる事なく、また上を見上げて毛繕いを続けたそうです。群に受け入れられたこの出来事をグドール博士は「人生で最も誇らしい瞬間」と振り返ります。

その後数年間、グドール博士はいままで観測された事のないチンパンジーの行動を目撃し、それらはチンパンジーのみならず、霊長類や動物全体に対する考え方を見直さざるを得ないような発見が数多くなされました。

そのひとつが、彼女が名づけたチンパンジー「デイビッド・グレイビアド」。デイビッドは小枝から葉っぱを取り除き、シロアリを捕る装置を作ったのです。人間以外の動物が道具を使う行為を記録したのは、これが史上初の事でした。


それからおよそ60年、165,000時間以上の観測データを蓄積。ゴンベでは、マイルストーンとなる発見がいまでも行われています。

ここではギネス世界記録も達成されています。例えば最近、ゴンベの国立公園に住む2匹のチンパンジー、ゴールデンとグリッターは「最高齢の双子のチンパンジー|Oldest chimpanzee twins」に認定されました。双子のチンパンジーが生まれる事はとても稀な事で、JGIの研究者たちはこの双子の成長を間近で観察し続ける事ができました。ゴールデンとグリッターはそれぞれ母になり、片方は双子を産んだのだとか!


JGIの活動は、現在ではゴンベにとどまらず、アフリカを含む世界各地で保護プロジェクトが行われています。

グドール博士によると、チャリティーは動物たちのみならず、チンパンジーが生息する地域に住んでいる社会も対象にしているそうです。「私たちは、ゴンベのチンパンジーの研究を続ける一方で、地域の人々を支えるプログラムも開発しました。それは包括的なもので、土壌を荒荒らさない農業や、過剰使用された農地の肥沃(ひよく)修復、日陰で育つコーヒー、タンザニアの自治体と協力して作るより良い医療施設や教育施設などが含まれます。」

「そして現在では、チンパンジーが生息するウガンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、セネガルでも同様のプログラムを開発しました。さらにマリでもプログラムが開始する予定で、今後はカメルーンやガボンでも行いたいと考えています。」


グドール博士が特に誇りに思っている活動が、「Roots & Shoots(ルーツ&シューツ)」です。この環境教育プログラムは、幼稚園から大学の生徒が最も重要としているものに注目していて、野生動物の保護のみならず、自然環境や社会問題に関連しています。

「保全保護プログラムを運営するための基金を集めるのはとても大変な事です。それなのに、新しい世代の人たちが私たち以上の事ができないのであれば、何の意味があるのでしょうか?」


ヘッダーおよびサムネイル画像:Jane Goodall Institute/Michael Neugebauer

JGIからの注記:ジェーン・グドール博士およびジェーン・グドール・インスティチュートは、野生のチンパンジーに触れたりその公道を妨げるなどの行為を是認しません。画像に登場するチンパンジーの多くは救助され避難所で生活するもので、専門家によって世話がされています。