

イギリスのエンジニアリング会社JCBが、ターボチャージャーを搭載したトラクターをつくり、ギネス世界記録「最速のトラクター(改造車)|Fastest tractor (modified)」に挑戦しました。
操縦を担当したのは大型トラックのメカニック兼バイクレーサーで大のスリル好き、ガイ・マーティンさん。過去にも雪そりの最速記録やせっけん箱の最速記録などを更新してきた彼は今回、(通常の最高速度は65.9831 km/hの)JCB Fastracに乗車し、217.570 km/hを出し、ギネス世界記録を更新する事に成功しました。
ガイさんは以前にもJCBとタッグを組んで第一次世界大戦の戦車のレプリカをつくった事もあり、その頃から世界最速のトラクターをつくる事を考えていたとか。「それを操縦する人が必要になったら呼んでね」と言った事がきっかけで、今回のドライバーが決まったそうです。
記録挑戦はエルビントン飛行場にある長さ3 kmの滑走路で行われました。ガイ・マーティンさんはそこで、2018年に「トップ・ギア」が達成した記録140.45 km/hを超える事を目指しました。
1回目の挑戦が行われたのは2019年6月。ガイさんはまずマシンをチェックして、クラッチや旋回などのフィーリングをつかみました。「リアにデフがついていないからタイトなターンはできないから、後はギアチェンジの感覚をつかむ事が必要だった。エンジンも低回転域ではターボが入るまでは鈍いので、その挙動も確かめたかったんだ。」
シェイクダウンを行った後、記録挑戦に臨んだガイさん。JCB Fastracの加速はすさまじく、後を追うサポートカーが食いつくもの難しかったほど!そしてたたき出した速度は166.79 km/hでした。
速度の記録では風向きや傾斜などの影響を考慮し、往路・復路での速度の平均値が用いられます。
ガイさんによると、滑走路では見晴らしがよく、スピード感覚を把握するものが少ないため、飛ばしているという感覚はなかったそうです。
JCBによる改造トラクターの動力は、出力1,000 hp以上のエンジン。その動力をよりよく活用するために、6速のトランスミッションを導入し、速度増加に伴いより空力特性のよいキャブを取り付けています。その他にもフロント・バンパーやディフューザー、軽量化シャシーなど、あらゆる改造が施されています。
ガイさんによると、見た目はトラクターでも実際走らせると全くの別物なのだとか。「中には5点ハーネスがついていて、ラジオもないしカップホルダーもない。このサイズのトラクターの多くは冷蔵庫やエアコンもついているけど、このマシンにはついていないよ。」
166.79 km/hで記録を更新したものの、まだ納得できなかったJCBのチームとガイさん。10月23日にエルビントン飛行場に戻り、改めて記録に挑戦する事にしました。結果、217.570 km/hを記録し、わずか4か月で新たな記録を出す事に成功しました。
これで合計4つのギネス世界記録を保持する人となったガイさん。さらなる記録挑戦の可能性について問われると「スピードを出すのが好きなんだ。ちょっとリスクのある事だったら乗り気だよ」と答えました。