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今までギネス世界記録は「最高齢の猫|Oldest cat」、「最も毛の多い猫|Furriest」、「最もひげの長い猫| Longest whiskers」など、様々な"世界一"を持った猫たちと出会ってきました。

その中でも特に注目を浴びるのが「最も長い猫|Longest」と「最も背の高い猫|Tallest domestic cats」で、前者の記録は最近更新されたばかりです。しかし実は動物たちの長さを記録にし始めたのは最近の事で、「最も長い飼い猫|Longest domestic cat」が初めて記録として紹介したのも1990年後半でした。その記録タイトルを初めて獲得したのはスコットランドに住む当時4歳の猫、スノービー(Snowbie)で、記録は103 cmでした。

ギネス世界記録は以前、動物の大きさの判断には重さを重視していました。例えば「最も大きな猫|Largest domestic cat」は1986年に記録を更新してから長い間、オーストラリアに住む体重21.3 kgのトラネコ、ヒミーが記録を保持していました。しかし現在ではペットの重さを記録として認めておらず、高さ・長さで認定するようになりました。新しい基準で全記録保持者のヒミーを審査すると長さは96 cmで、現記録保持者の120 cmを大幅に下回る事になります

猫の"長い"歴史

まずは現記録保持者のバリベルくん。イタリアに住むこの猫は2018年5月22日計測時の長さは120 cm。その長さは一般的な野球バットより長く、iPadを7台並べられるほど!イタリア、ミラノの近くにあるヴィジェーヴァノに住むバリベルくんは、町の人気者。バギーで散歩していると、多くの人たちが一目見ようと寄ってくるそうです。

barivel

バリベルくんにはアドバンテージがあります。なぜなら彼はメインクーンだから。アメリカンロングヘアーとも呼ばれているこの種類は通常76 cm - 101 cmまで成長すると言われており、過去10年あまりの間、ギネス世界記録タイトル「最も大きな飼い猫|Longest domestic cat」を獲得し続けています。

ちなみにメインクーンという名前はアメリカのメイン州が由来。メインクーンは1985年から、メイン州公式の猫として認識されているのです。他にもラグドールやバーマンなども大きく成長しますが、特にノルウェージャンフォレストキャットはメインクーンとも特徴が似ているので、同様な系統なのだろうと思われます。

Norwegian forest cats share many characteristics with Maine coons, including large, stocky bodies and long, fluffy coats

ではある一部の種類が大きくなるのでしょうか。ベルクマンの法則によると、気温が下がる高度の高い場所に生息する場合に、体のサイズが大きくなると言います。身体の体積に対して表面積を減らす事によって、熱が逃げるのを抑えているのではないかと考えられます。メインクーンやノルウェージャンフォレストキャットなども元々の生息地は比較的寒い場所で、毛皮も厚いのです。

大きさを左右するのはそれだけではありません。品種改良を通じて一定のサイズを保つための育種も、ペットなどの動物の大きさに影響しています。

世界最大の猫の血統登録機関 TICA(The International Cat Association)のメインクーン種委員会会長のリズ・ハンセンに話を聞いたところ、品種の由来についてはいくつかの説が存在するそうです。

アライグマと飼い猫の交配などという作り話もありますが、中には根拠のある説も存在します。例えばマリー・アントワネットが戦時中に自身の大きなペットを海外にイギリスに持ち運び、それが現地の飼い猫と交配しメインクーンになったという説があります。

毛が厚く、雪から守るためにおなかの部分の毛の方が長くなっていて、つま先の間にも毛が生えていて歩く時に足の裏を覆うようになっています。さらにしっぽもふかふかで、ブランケットのようにして暖かく寝る事ができます。

メインクーンが文献に初めて登場するのは1861年の事。ショーなどでは人気の品種で、1895年に開かれたマディソン・スクウェア・ガーデン・ショーでは、茶色いメインクーンのコジーが「ベストキャット」に選ばれました。

リズさんによると、2017年時点で3,021のメインクーンがTICAで登録されていて、同機関で3番目に人気の品種だと言います。「グレート・デーンのように、メインクーンは大きさも重要な要素の1つです。品種の基準として、体の大きさは中から大である必要があるとされています。胸が広く筋肉も発達している必要があります。」

ludo

バリベルくんの前に記録を保持していたのはイギリスのルードちゃん。2015年10月6日に測定した際、長さは118.33 cmでした。1.7 cmという僅差でバリベルくんにギネス世界記録の座を譲る形となりました。

Mymains Stewart Gilligan, aka

しかしバリベルくんやルードちゃんの長さは、「歴代で最も長い飼い猫|Longest domestic cat ever」、Mymains Stewart Gilligan(ステューイーくん)の123 cmには及びません。彼もメインクーンで、一時期は「最も長いしっぽを持つ飼い猫|Longest tail on a domestic cat」(41.5 cm)になった事も。ステューイーくんは残念ながら2013年に亡くなりました。

ちなみにバリベルくんが記録更新をしたのは2歳の時。メインクーンは通常4,5歳まで成長するので、ステューイーくんの記録を抜く事ができるかもしれません。

高さでも認定

ギネス世界記録が認定している猫の記録は、長さだけではありません。実は高さでも認定が行われているのです。

Arcturus in the kitchen with his owners William and Lauren Powers

現在「最も背の高い飼い猫|Tallest domestic cat」でギネス世界記録に認定されているのはアメリカ、ミシガンのArcturusくんで、2016年11月3日に測定した時は、地上から馨甲まで48.4 cmもありました。

そして彼と一緒に住んでいたメインクーンのCygnusくんは「最も長いしっぽを持つ飼い猫|Longest tail on a domestic cat」を所持。長さは44.66 cmでした。2匹の様子は次の動画で確認する事ができます。

残念ながら、ArcturusくんとCygnusくんは2018年に亡くなってしまいました。ちなみにArcturusくんの前に背の高さで記録を保持していたのはSavannahちゃんで、記録は48.3 cmとわずか0.1 cmの差でした。

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ギネス世界記録では、「存命中の最も背の高い飼い猫|Tallest living domestic cat」を探しています。「家の猫なら……!」と思った方は、ぜひ申請をしてみてください!  

申請をする前に注意していただきたい点が1つあります。過去3件の記録はサバンナという猫種によって達成されてきました。しかし猫好きの中では「飼い猫ではないのでは」という声があります。確かにサバンナは飼い猫とアフリカのサーバルのハイブリッドで、アメリカの州では飼う事が禁止されているところもあります。そしてイギリスでは特別な免許がない限りF1第一世代のサバンナを買う事ができません。

Savannah Islands Trouble with his owner, Debby Maraspini (USA)

認識されている最初のサバンナは1986年4月に生まれ、この"ハイブリッド"猫は野生の特徴も持ち合わせていたそうです。多くの猫はトリックを学んだりリードをつけて散歩をしたりと、犬に似たような面がありました。中には水遊びが好きなサバンナもいるのだとか。

サバンナは世代分けされていて、「F1サバンナ」の場合は野生の遺伝子が50%含まれています。一方で「F2サバンナ」は最大75%の遺伝子がサーバルとなっています。「F3サバンナ」は曽祖父母にサーバルがいる種類です。

このような背景がある中、TICAは2001年から、すべてのサバンナを猫種として認識しています。サバンナ種委員会のブリジット・カウエルさんによると、サーバルの系統が入っている事でより危険だと言う考えを否定しました。

サバンナ好きにとって、サバンナが野生である事は都市伝説のようなものです。サーバルも飼い猫にしやすい種類ですし、一般的に言う野生とはより凶暴であるという事だと思いますが、サバンナはそのように育てない限り"野生的"にはなりません。ただ猫の中ではより活発的なのは確かですね。」

飼い猫を越えて

家に住んでいるペットの枠を越えて、ネコ科全体で大きさを競うギネス世界記録も存在します。「最も大きな野生のネコ|Largest wild cats」は、ロシアの森林に潜むアムールトラで、鼻からしっぽの先までの長さは3 m以上におよぶ事も!

wild-cat_Tiger

重量も"ヘビー級"で、1950年で確認されたアムールトラの重量は384 kg……これは成人男性6人分に相当する重さです!

しかし「最も大きなネコ(存命中)|Largest living cat」はトラではありません。ライオンとトラの間に生まれたライガー「ヘラクレス」は、2013年計測時には長さ3.33 m。重さは412.2 kgで、平均的なメインクーン46匹分もあるのです!

Hercules lives at Myrtle Beach Safari wildlife reserve in South Carolina, USA