Karina Oliani longest tyrolean over a lava lake hanging header

冒険家で人里離れた地域で医療を行うカリーナ・オリアニさんは、いままでにあらゆる体験をしてきました。反重力浮遊を体験したり、ブラジル人女性初のK2登頂を成功させたり、ホホジロザメの隣を泳いだり、危険にさらされた野生動物を救出したり……。その幅広い活動を振り返るには、「何をしたか」と聞くより「何をしていないか」を聞いた方がいいかもしれないほどです。

私たちが住む地球を新たな角度から体験するために、世界を旅回ってきたカリーナさん。彼女が今回注目したのは、地球で最も暑い地点の1つ、エチオピアにある活火山、エルタ・アレの溶岩湖でした。

カリーナさんは1187 °Cの溶岩の真上にケーブルを張り、それをつたって熱い湖を横断したのです。長さ100.58 mの横断に見事成功したカリーナさんは、ギネス世界記録「溶岩湖上の最も長いチロリアン・トラバース|longest tyrolean traverse over a lava lake」に認定されました。

熔岩湖の上をロープで横断するカリーナ・オリアニさん

私は小さなころから自然のことや大きな挑戦に魅了されていました。そこで、地球最大級の溶岩湖を横断する以上の挑戦はないのでは?と思いついたのです。

カリーナさんが記録挑戦に興味を持ったのは、"世界の不思議"と関わることへの情熱がきっかけだったそうです。

アウトドアでの挑戦にはずっと情熱を注いできました。だから何度も海、山、ジャングル、砂漠を探検してきましたし、エベレストも2回登ってきたんです。

スノーボードを使い熔岩の上でチロリアンを行うカリーナ・オリアニさん

アナコンダとダイビングをしたり、エベレストを南側・北側からそれぞれ攻略したり、飛行中に飛行機の翼を歩いたりしてきたカリーナさんですが、火山での冒険は未達成でした。

そこで行った今回の挑戦。その道のりは決して簡単なものではありませんでした。

まずは火山を登り溶岩湖にトラバースを準備するチームを編成する必要がありましたが、声をかけた多くの人は危険すぎると考えたそうです。

しかしカナダのリギング専門家、フレドリック・シュットさんは、カリーナさんの冒険に対する情熱を信じ、安定したトラバースを実現するための設置地点の特定や工具の素材を選定しました。

カリーナ・オリアニさん率いるチーム

安全のためにカリーナさんとチームは特別なヒートスーツを着用し、溶岩の波からくる熱気と灰を含んだ空気から身を守りました。

危険な溶岩の上をケーブルから観察したカリーナさんは、マグマの持つ鮮やかな色と美しさに魅了されたといいます。

挑戦をしたり、自然とつながることは私の人生において根幹の部分であって、それをすることに心を動かされます。私にはこのつながりとエネルギーが必要なのです。危険にさらされ、自然界の力を肌で感じるとき、生きていることをより実感することができるのです。

挑戦は問題なく進み、日が昇り始めたころにトラバースを見事達成しました。

私のインスピレーションは自然界からくると信じています。人類は自然と強烈な関わりを常に持っていますが、そこから離れ、大きな都市をつくり、コンクリートのジャングルで暮らすことを選びました。しかし海や山、ジャングルに戻るたびに、私は故郷を感じ、私をエネルギーで満たしてくれるのです。

カリーナさんによると、彼女は幼少期、姉妹でブラジルのジャングルに潜り込み、冒険ごっこをしていたそう。そんな幼少期の思い出が、いまのカリーナさんの生きざまに反映されています。

12歳で初めてのスキューバダイビングのクラスに入り資格取得を目指し、17歳にはブラジルのウェイクボード大会で2度目のチャンピオン、そして3度目のスノーボードのチャンピオンに輝いたカリーナさん。現在は前線で働く医師で、緊急医療と人里離れた地域で医療を行う資格を持っています。ヘリコプターとパイロットの免許も持っていて、あらゆるミッションを行ったり、アクセスが困難な場所での医療行為をしたりしています。

Karina Oliani longest tyrolean over a lava lake on plane

自然界の美しさと日々接しているカリーナさんは、その様子を静止画や動画に収めています。会社「Pitaya Films」も立ち上げ、彼女が監督・プロデュースした番組は、ブラジルのテレビ局やディスカバリー・チャンネル、フェイスブックウォッチ、Channel OFF、ヘジ・グローボなどで放映されました。

カリーナさんは自身の冒険心や恐れを知らない心を通じて、次世代の女性たちにインスピレーションを与えたいと思っているそうです。

公式認定証を受け取るカリーナ・オリアニさん

私が達成してきたことを通じて、世界中の女の子と女性にパワーを与え、それぞれの夢を追う動機づけになればと思っています。私の行動をみて「あの子ができるなら、私だってやろうと思えば何だってできる!」と感じてもらえればと思います。大統領になるでも、火山を横断するでも、誰も達成していないことでも、彼女たちにはできるし、やるべきなのです。