ホンダアクセス・インタビュー

ホンダアクセスは、本田技研工業が販売する四輪車の純正用品を開発、販売する企業です。そんな部品メーカーである同社が、ギネス世界記録に挑戦することに! その目的は、創立40周年記念式典に向けて社員の一体感を高めることでした。

挑戦することになったのは、「最大の3Dパズル|Largest 3D Puzzle」という記録タイトル。社内の有志チームが協力製作したのは、自社のネオクラシックカーをイメージした発砲スチロール製3Dパズルのピースです。 でも、どうして、ホンダアクセスが、ギネス世界記録に挑戦しようと思ったのでしょう? ギネスワールドレコーズジャパンの小川エリカがホンダアクセスを訪ねました。

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40周年記念のイベントにギネス世界記録挑戦

小川:ギネス世界記録に挑戦しようと思った最初のきっかけを教えてください。

山口さん:「会社の40周年記念のイベントに何をやろうか」というところからはじまりました。開催場所はすでに舞浜のホテルと決まっていて、そこで従業員全員が楽しく一体感を感じられる何かをやれたらいいなとみんなで案を出しあっていたんです。その中のひとつがギネス世界記録への挑戦でした。

山口悠雅さん

小川:どうやって今回の記録に挑戦しようと決めたのでしょうか。

山口さん:これまで誰もギネス世界記録に挑戦したことがなかったので、どんな挑戦を他の企業がやっていたかを調べてみました。ホンダアクセスといえば“自動車用品”がキーワードなので、クルマがいいなぁ、って。でも、わが社らしい挑戦タイトルを考えるってけっこう大変でした。

小川:どのくらい前から40周年記念イベントを企画されていたんですか?

佐藤さん:40周年記念イベントの企画は1年前から始めて、イベントのおおよそのメニューが決まって、「よし、これで行こう!」となったのは既に4ヵ月くらい経っていました。イベントの8ヶ月前くらいです。記念イベントのコンセプトとして、“感謝・飛躍・一体感”という言葉を掲げていたので、それに基づいた条件で何ができるか、と考えていきました。

佐藤義明さん

メンバーで丸一日ホテル会議室に缶詰に

小川:“感謝・飛躍・一体感”とはとてもすばらしいコンセプトですね。イベントの企画はみなさん5人で担当されたのでしょうか。

佐藤さん:はい、ギネス記録挑戦については僕たちで考えました。みんなで「わあっ!」ってやって一体感を出すだけでなくて、終わった後でもなにか残った方がいいと考えて、ギネス世界記録に挑戦することを決めました。記録を達成することが出来れば、「認定証」っていう目に見える形で思い出が残るし、なおかつ一体感も達成感も味わえる!と、みんなの意見が一致したんです。

小川:後はトントン拍子?

中村さん:いえ、ギネス世界記録に挑戦しようと決まったまでは良かったのですが、なかなか具体的な挑戦内容が決まらなくて(苦笑)。「山籠もり」と言って、実行メンバーで丸一日ホテルの会議室に缶詰になって話し合ったりもしたんです。当初は人文字のアートを作って撮影しようという案もあったのですが、あるとき、「クルマを組み立てたら楽しいんじゃないか?」っていうアイデアがポロっと出たんです。そしたら、「おー、いいね!」ってみんな賛成してくれたんです(笑)。

中村文香さん

小川:ホテルで1日缶詰になって企画会議をされたなんてビックリしたんですけれど、40周年はそれだけ大きな意味をもっていらっしゃったということですよね。企画チームに抜擢されたときはどんなお気持ちでしたか?

山口さん:人事部からの発令で、「40周年記念プロジェクトチームに配属します」という案内が全社に出されました。それだけ会社としては大きなイベントだったんだと思います。私なんか入社してすぐなので、こんなことさせてもらえるなんて嬉しい!と、誇らしい気持ちでいっぱいでした。

發知さん:日高、新座、栃木と、私たちプロジェクトメンバーはみんな職場がバラバラだったのですが、一年間一緒にイベントの準備が出来て、絆が深くなったことが嬉しかったです。

小川:挑戦するにあたって、どんなことに気をつけていましたか。

山口さん:実は…当日まで社員のみなさんには挑戦内容を伝えていませんでした。

小川:えー?それはドキドキでしたね。今回のギネス世界記録への挑戦は社長にもご相談されたのでしょうか。

佐藤さん:僕が社長や役員に話しを通しました。提案会議の席で「本当にできるの?」って不安になられる上司もいましたよ。一瞬気まずい雰囲気になったんですけど、「プロジェクトチームみんなで決めたので、これでやらせてください。一体感、絶対出ます!」って承認もらいました。

小川:すごいですね。責任重大でしたね!社長の承認を取られてからは、いよいよ3Dパズルの制作をスタートされたのでしょうか。

柳田貴之さん

パーツごとに分類して、チームで記録に挑戦

柳田さん:はい、当初は3Dプリンターで作ろうというアイデアがあったのですが、残念ながら予算的に厳しくて、どうしよう、どうしようって悩んでいたのですが、お世話になっている協力業者さんにそれとなく相談したところ、3D パズルを発泡スチロールで作るという提案をいただいたんです。価格もリーズナブルだし、サンプルをみたときも表面の滑らかさが想像以上にすばらしかったので、これで作るぞ!って決まりました。

中村さん:その業者さん、わたしたちの思いに共感してくれて、最初のお見積から40周年にかけて40万円も値引きしてくれたんです(笑)。

佐藤さん:でも、その後でもっともっといいモノを作ろうって、どんどんパズルが複雑になっちゃって。結局値引きしてくれた分、追加で発注しちゃったんですけどね(笑)。

小川:ギネス世界記録への挑戦を社員のみなさんへのサプライズとするために、他の社員にわからないようにパズルを準備されたのは大変でしたね。

中村さん:ちょっと辛かったですね。「なんで今日は日帰り出張なんだ?」って聞かれたりして戸惑いました。「なんで青山(※)に行くんだ?」って(苦笑)。
※青山はギネスワールドレコーズジャパン株式会社の旧オフィス所在地。

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小川:ギネス世界記録への挑戦日当日は、社員のみなさん全員が記録に携われるように、役割分担が大変だったんじゃないかなと思うのですが、いかがでしたか?

中村さん:当初は宝探しをするようにピースを探してもらってパズルを組み立ててもらおうとしていたのですが、全体の組み立て時間が読めなかったのと、恐らく時間がかかりすぎ手しまうだろうと考えて、パーツごとに分類して、チームで記録に挑戦してもらうことにしました。全部で18チームに分けて、部位ごとに担当をあてて組み立ててもらうことにしたんです。

山口さん:チームの中のそれぞれ一人ひとりが必ずいくつかのピースをはめることが出来るように計算してチームを編成しました。

佐藤さん:作業服をわざわざ着て、帽子もかぶって、組み立て工場でクルマを作るときと同じような演出もしました。

發知さん:完成するまでは何を作っているかわからないようにしていたんです。「何ができるかみなさんで考えながら楽しんでください!」という案内をしました。

發知洋子さん

初対面の人と協力して取り組める?

山口さん:ただ途中で、クルマのリア部分が組みあがった段階で「お~、どっかで見たことあるなぁ」って、分かった人がたくさんいましたね。

小川:今回、ギネス世界記録に挑戦していただき、どのような効果がありましたか?

山口さん:イベントの後で参加者のみなさんにアンケートを取ったんですが、ギネス世界記録に対してのポジティブな意見が多くて、「初対面の人と協力して取り組めた」など、まさに私たちが望んでいた通りの回答があったのがうれしかったです。弊社は事業所が3つに分かれているんですが、普段なかなか関わる機会がなくて会話も少ないので、今回の記録挑戦時には3つすべての事業所メンバーが必ず混在するようにチームを組んだんです。その効果が得られたのは本当に嬉しかったです。

佐藤さん:まさに、“一体感”が出せたのは狙い通りでした。

中村さん:私たちの活動についてアンケートをとったところ、8~9割の方が満足した、と回答してくれたんです。アンケートのレポートを見てくれた社長が、「休日参加にも関わらず、8~9割の社員が満足してくれたら、それは100点と同じこと」と、お褒めの言葉をいただきました。

山口さん:出来上がった3Dパズルなんですが、社長が「捨てるのはもったいないから、とって置いたら?」と提案してくれて。ギネス世界記録に公式に世界一だ、って認めてもらえたものだから、わたしたちの製品を売ってくれている販売店の方々やオフィスにお越しになるお客様にも見ていただきたいと思っています。

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小川:ギネス世界記録に挑戦され、記録達成となった日から数ヵ月が経ちましたが、挑戦前と後では社員のみなさんに変化はありましたか?

山口さん:「たのしい企画をありがとう」と言ってもらえました。すごく嬉しかったですね。

中村さん:イベントで若干顔が広くなったので、職場の組合活動の代表に選出されました。

山口さん:ホンダの本社に打ち合わせで出向くことがたまにあるのですが、「そういえば、この前のギネス(世界記録)のやつ、すごかったよね」って声をかけてもらえたりしました。普段用品は脚光を浴びる立場になることは少ないので、違う形ですがホンダアクセスの名前が話題に上がるのはうれしいですね。

佐藤さん:こういった全社をあげての活動がきっかけで、社員同士のコミュニケーション力は上がっていきますよね。

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小川:まさに40周年記念イベントの掲げる“感謝・飛躍・一体感”をみなさん体感されたようですね。

全員:そうですね。本当にそう感じています。

佐藤さん:わたしたちプロジェクトチームそのものが一体感を感じなきゃだめだ、と思っていました。終わったいま、僕らのチームが一番一体感と達成感があったと自負しています。

山口さん:私の職場では、プロジェクトチームだけじゃなくて、本業の部署のみなさんとの絆も深まりました。ギネス世界記録挑戦プロジェクトを本業と並行してやっているときに、ところどころで同じ部署のみなさんが本業のフォローをしてくれたんです。本当に感謝しています。

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20年後も「ギネス世界記録に挑戦したよね」と記憶に

小川:今回の記録挑戦、達成できた一番の要因は何だと思いますか。

佐藤さん:ホンダで働く人たちって根底に共通するものがあるんですよね。火事場の馬鹿力じゃないですけど“何かあったら一気に集中する”というところと一体感が相まったから達成できたと思います。みんな、モノづくりが好きだからニヤニヤしながら「楽しそうじゃん」っていう雰囲気に自然となっちゃうんです。そういうものを持っているから今回の挑戦が成功したんじゃないかと思っています。

山口さん:「失敗を恐れない」というのがホンダのポリシーなんです。やってみよう!っていう精神をみんな持っていたし、それに遊びも大好きな人たちばかりなのでうまくいったんだと思います。もともとホンダの社員は“世界一”とか“世界初”とかが大好きなので、ギネス世界記録に認定されてとても嬉しいです。

小川:最後に。これからギネス世界記録に挑戦することを検討している企業のみなさんにメッセージがあればお教えください。

山口さん:会社でギネス世界記録に挑戦するときって、社員のみなさんがいるからこそ達成できることだと思うんです。そういうのってすごく素敵だなと思います。今回もホンダアクセスのみんながいたから達成できたんですけど、絶対に心に残るものだと思うし、私たち企画サイドもとても良い経験になりました。10年後も20年後も、「そういえば、ギネス世界記録に挑戦したよね」っていう話をいつまでもいつまでも忘れないで話題になると思うので、企業としてギネス世界記録に挑戦するのって良いことなんだと思います。

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取材後記/小川エリカ

みなさんの笑顔がすばらしく、とても魅力的な職場環境なのだと感じることが出来ました。ホンダアクセスのみなさんのモノづくりに対する想いやその強いチームワークが感じられる、とても楽しいインタビューでした。世界記録達成、本当におめでとうございます!!

ホンダアクセス公式キャラクターの「はっくるべあ~ くるタム」と共にガッツポーズ

ギネス世界記録を使った社内イベントについては、こちらをご覧ください。