エボルタ国内市販営業 多田 大さん

松下電器の時代から、日本の家電技術を牽引してきた技術のリーディングカンパニーが「世界」にこだわるには、その先にユーザーのベネフィットがあるからだと言います。世界で最も長持ちするアルカリ電池、また、その電池を使って走り切る最長のプラスチックレールと2つのギネス世界記録を体験したパナソニックEVOLTA。この製品に直接携わったエボルタ 国内市販営業の多田大さんに話を伺いました。

意識しているのは、「絶えず技術の進化を止めない」ことと「ユーザーのベネフィットの創造」

ーー2つのギネス世界記録、「最も長持ちするアルカリ乾電池|Longest lasting AA alkaline battery cell」「最長のプラスチックレール|Longest plastic toy train track」へと認定されておりますが、その感想をお聞かせください。

まず、最初の「最も長持ちするアルカリ乾電池(Longest lasting AA alkaline battery cell)」に関しては、世界には数多くの乾電池メーカーが存在する中で、世界一の長もち性能を認定いただいたことに感謝しています。

ギネス世界記録への認定は商品アピールにも大きく貢献しましたし、エボルタがヒット商品に成長していくというビジネスへの良い影響を与えてくれたと思っております。

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そして「最長のプラスチックレール|Longest plastic toy train track」についてです。こちらは、廃校になる小学校の生徒によりプラスチックレールが1本1本組立てられ、みんなの力で最長のレールをつくり上げることに成功しました。そのレールを単3サイズ1本の乾電池で走り切ったという記録は、きっと本プロジェクトに参加してくれた小学生に大きな思い出を残すことができたのではないでしょうか。

ーー性能・機能を世界一に高めていくプロセスで、難しかったのは、どんな点でしたでしょうか。

乾電池の性能を開発する過程で、いちばん頭を悩まされたのは、トレードオフという現象でした。これは、ひとつの特性を高めようとすると、他の特性が低下する、というものです。様々な設計因子のトレードオフは、いわば複雑なパズルであり、これを解くためのブレークスルー技術の探索を関係者の知恵、知識を集めながら進めてきたわけですね。

ーー世界一長持ちする「アルカリ乾電池」の開発プロジェクトは、どのようにしてはじまり、どんな風に進められたプロジェクトだったのでしょうか。

このプロジェクトは、各職能が横断するプロジェクトだったのです。ですから、発足させて最初に行なったのは、開発、生産、市場導入についての検討でした。それから、3つの革新のアプローチで世界NO.1性能を目指し開発を進めはじめました。その3つとは、「材料の革新」「構造の革新」「工法の革新」です。そして最後は、「世界No.1実証」について、お客様に納得していただく必要がありました。それが、ギネス世界記録に認定してもらうための取り組みであったわけですね。

ーー元々、この「エボルタ」という乾電池は、コンセプトやメッセージというものがあって、つくりあげられた製品だったのでしょうか。

はい。パナソニックがトップメーカーとして一番お客様にとって価値があり、かつご理解いただきやすいコンセプトというものを考えました。それが、「世界一長もちするアルカリ乾電池」だったわけですね。

ーーでは、その分かりやすいコンセプトに加えて、技術的には、どんな意識が向けられていたのでしょうか。

とにかく「絶えず技術の進化を止めない」といいうことを意識していました。そして、「ユーザーのベネフィットの創造」です。具体的に言えば、「液漏れしにくい乾電池」や「保存後でも長寿命を維持できるチタンパワー」といった技術です。

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ーー商品が生まれてから販売され、多くの消費者に使ってもらうという状況まで、どのようような想いでプロダクトに関わられているのでしょうか。

まず、乾電池という身近な商品に携われることには大変なやりがいを感じました。老若男女を問わず多くの方の生活で実際に使ってもらう商品ですからね。そして、新商品が生み出されて、市場で認知されて、ユーザーの皆さんに安心してお使いいただけることは、本当に開発者冥利に尽きる話です。だからこそ、その期待を裏切らないようにしようという想いが沸いてきますし、日々、進化を止めてはいけない、と使命のような気持ちまで抱いております。

ーーなるほど、使命という言葉が出てきましたので、少し大きな視点からの質問をさせていただきます。日本を牽引してきたメーカーの開発者として、今後の日本のモノづくりには、どんな印象をお持ちですか。

日本人の持つ発想の豊かさ、夢を描き実現するひたむきさ・執着心は、依然グローバルでみても比類のないものがあると思います。諸外国のもつ強みも認識したうえで、ユーザーのっ欲する価値を追求すれば、きっと明るい未来が待っていると思います。

ーーでは、これまで世界を席巻してきた日本のモノづくり企業として、または、世界一を達成した開発チームのひとりとして、「技術で世界に挑む」ということには、どんな意味があると思いますか。

世界を見れば、異なる文化・価値観があり、日本だけで成功するよりも、数倍大きな感動、やりがい、心の豊かさを感じることができるはずです。特に若い方は、グローバルにチャレンジするチャンスを求め、失敗をしてもよいので、世界を「味見」して、自らの成長の糧にしていただきたいと感じます。

ーー日本がいまも高い技術を持っているのは、日本の強みだと思います。その技術をどう世界に向けられるか、が大きなポイントになるのかもしれませんね。

日本の企業は、高い技術を持ちながらも、ビジネスにつなげることが必ずしも上手とは言えません。職能に捉われず、外部を巻き込みながら、より広い視野で思考すると、また見えてくるものも違ってくるのだろうと思います。

ーー最後に『ギネス世界記録』のファン、読者にメッセージをお願いできますか。

2008年よりギネスに認定頂き、今日まで商品に磨きをかけてきました。今後とも、記録を継続できるように、またより良い製品を生み出せるように取り組んでまいりますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。