書籍『 ギネス世界記録 2017 』掲載!

ギネス世界記録への認定となった体操の白井健三選手に、
記録認定を記念しての独占インタビューを敢行しました。
1996年生まれ、若干18歳の彼の言葉は、
躍動感ある知性に溢れたものでした。
どんなインタビューになったのか?
早速ですが、以下、お楽しみ下さい。


Q. 白井選手は、毎年発行される『ギネス世界記録』の本のことはご存知でしたか?

A.
学校の図書館にあるので、よく読んでますよ。
世界には、色んな種類の世界記録があって、
多様な人がいるんだなぁと思って、驚きながら楽しんでます。


Q. なるほど、では、その ギネス世界記録に認定された気持ちはどのようなものですか?

A.
正直に言うと、実感がわかないという感じです。
どうしてかと言うと、
自分が4回ひねりを成功させたのは、ほぼ1年前のことになるんです。
今年は、あの技をずっと使ってきているので、
今となっては、懐かしい感じさえある。
自分には、かなり馴染みのある技なんです。
だから、今このタイミングで、技の認定をされているのは不思議な感じもしますね。


Q. 今回は、
「世界大会種目別決勝「ゆか」において初めての4 回転ひねり
 First person to perform a quadruple twist in a major final (floor)」
という記録にも認定されていますが、
はじめて、あの技を決めたときの気持ちはどのようなものでしたか?

A.
実は、この技、世界選手権が終わるまでは
特別な扱いも受けていない技だったんです。
でも、世界選手権が終わってから、
急に、テレビやメディアに取り上げられるようになって、
注目されて、そのことに驚きました。
自分としては、自分が持つ技のひとつでしかなかったので。

Q. 世界一の技となったわけですが、どんな気持ちで磨いてきたのでしょうか?

A.
僕は小さい頃からヒネリが得意だったんです。
だから、ひねりを中心に演技の技を組むということが多くしてきました。
4回転ひねりは、その延長線上にある技だったんです。
実は、4回転ひねりの技も「人がやらない技だ」という意識なくやっていて、
2回、3回と練習していくうちに4回転に到達したので、とても自然な技なんです。
だから実感がないんです。
僕にとってこの技は、
演技構成の中にいつも入っている一つの技という認識なんです。
だから、この技で世界一となることを目指してたわけでは全然なくて、
得意なことを淡々と追求した結果が「世界一」というだけのことだったんです。
気持ちとしては、そんな感じだったから、
世界選手権で自分の名前がついたと聞いたときは、
金メダルをとったときよりも吃驚しました。
その意味では、技に自分の名前をつけてもらえたのは本当にラッキーでしたね。

Q. では、その得意な技、得意なことを発見するプロセスというのはどういうものだったのでしょうか? どう発見したのでしょうか?

A.
僕は、体操選手としては、体も小さくて、体重も筋力もなかったんです。
だから、高い宙返りとかができなかったんです。
でも、あるとき、練習を重ねている中、偶然、
縦にまわるより、横にまわった方が自分に合っているなと気が付いたんです。
アメリカの筋力のある選手などは、
本当に高い宙返りをするんですよ。
自分には、そういうことはできないので、
何かないだろうか、と、
自分の中のオリジナリティを探す過程で
勝手にヒネリに向かっていったのだと思います。

Q.世界のメディアが、白井選手の技に大変驚いて、大きく報道されましたね。そのことについては、どう思いますか?

A.
世界の人たちを驚かせられたことは、素直に嬉しいことです。
でも、正直なことを言うと、
実は僕は、人がどう思うとかあんまり興味がないです。
1位になったことや16点をという高得点を取ったとということよりも、
一番の満足は、自分自身で本当にいい演技ができたことでした。
たとえ、海外の選手が凄い演技をしたからと言って、
僕は、心が揺れるということは、ほとんどない。
それよりも、自分がバッチリやること!!
バッチリやれば、結果が、2位でも3位でも
そこまでだと思うしかない。

まず、何よりも、
自分がバッチリやるしかない。
自分の中の理想形を心のうちに思い描いて、
自分の力を出し切るしかない。
僕は、そういう主義なので、逆に、
自分の力が出し切れなかったときに、
優勝してもあまり嬉しくはないんです。
だから、その意味からは、自分が普段、
向き合っている一番の敵は自分自身なのかもしれないです。

Q. 世界に対峙している意識、世界を目指す意識というのはないのですか?

そうですね。世界の頂点に立ちたいという意識はそれほどありませんでした。
それよりも、
17歳という年齢でああいう舞台を体験できることだけでも嬉しいことなんです。
そして、その嬉しさに重ねて、自分の演技ができたことが本当に嬉しかったんです。
だから、その意味からは、それが「世界」かどうかというのは、関係なかったと思います。

Q. なるほど。それでは、他の選手、ライバルに対しての意識もお持ちではないのですか?

僕の世代は、同級生がとても強い世代なんです。
でも、僕は彼らのことをライバルだとは思っていません。
同じ体操仲間という気持ちを大切にしていて、
ライバルというほどのピリピリした関係にはなりたくないんです。
だから、僕の場合は、体操をやる気持ちは競争心ではないんです。
競争心で体操はやっていません。

Q. そう言えば、ずっと拝見していましたが、体操クラブでの仲間たちとのコミュニケーションもフラットに行っているみたいですね。

そうですね。そこは意識しています。
何故かというと、自分が上の立場にたっていても、
僕自身、上下関係というのは嫌いなんです。
だから、仲間とはフラットな関係でいたいと考えています。
自分のことは自分でやって、
絶対、自分のことで他人を使うということはしないようにしている。
どうして、こういう感覚を身につけたかというと、
言い方が生意気に聞こえるかもしれませんが、
イチバンには、「人に興味がない」からなんです(笑)。
自分は自分だし、人は人。
だから、自分のことも自分でする。
少し話はそれるかもしれませんが、
嫌いな人がいても、それはそれでほっとけばいい、と思っているんです。
誰かに愚痴を言う、ということはその時点で相手にしてるじゃないですか。
僕は、相手にする気もないし嫌いな人には興味を持たない主義なんですよね。

Q. 今の時代にあって、新しい平和的なリーダー像かもしれませんね。

実は、僕は、キャプテンなんですけど、
口で何かを言ってチームを引っ張るタイプではないということは
自分でよく知っているんです。
だから、僕が決めているのは、
演技と点数だけでチームを引っ張るということです。
口ではチームを引っ張れない、それが僕です。
だから、口は出さないし、逆に出せないんです。
言い返されたときに何もいえないので。(笑)

Q. 白井選手は、本当にオリジナルの考え方を持った新しいヒーローかもしれませんね。最後に、挑戦する人、子供たちへのメッセージを御願いできますか?

自問自答をすれば、自分のことは、自分がイチバンわかっていると思います。
まわりの人に何と言われようが、自分のしたいことをすればいいと思うんです。
逆に、自分が嫌だと思ったらやらなきゃいいと思うし、
自分をイチバンに信じてあげる。
たとえば僕は体操が好きだから、それに対して、やれる喜びを大切にしています。
ですから、、みなさんも、自分の得意なことを見つけたら、それに対して
常に攻める気持ちを持って向かっていって欲しい。
そうすれば、きっとすべてが上手くいくんだと思いますよ。

[編集部 スズ]


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こちら、白井選手が所属する体操クラブにて、ギネス世界記録の認定証の授与が行なわれました。
認定員は、記録管理部部長でもある石川佳織です。

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2つ同時にギネス世界記録に認定されるという快挙を成し遂げた白井選手、おめでとうございます!!

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インタビューでは、爽やかな笑顔を、哲学者のような知性をみせてくれました。
今後が非常に楽しみです。新時代の体操選手として、是非、応援してゆきたいですね。



 
2016年9月8日発売『ギネス世界記録2017』には、様々な記録を収録しています。詳細は、コチラへ。


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