Most Paralympic wheelchair tennis singles titles won

車いすテニスの国枝慎吾選手が、2021年のパラリンピックおよび全米オープンで優勝をし、自身が持つ3つのギネス世界記録を更新しました。

  • パラリンピックの車いすテニス男子シングルス最多金メダル|Most Paralympic wheelchair tennis singles titles won (male):3回
  • グランドスラム 車いすテニス最多優勝数|Most Grand Slam wheelchair tennis titles won:46回
  • グランドスラム 車いすテニスシングルス(男子)最多優勝数|Most Grand Slam wheelchair tennis singles titles won (male):25回

ギネスワールドレコーズは、公式認定証を郵送でお届けしました。また、リモートでインタビューを行い、記録更新などについてお話を伺いました。

――パラリンピックおよびグランドスラムの優勝を経て、今の率直な気持ちを教えてください。

パラリンピック出場は今回で5大会目でしたが、東京大会は特別なものでしたし、そこで金メダルを獲得することができて、本当に今までの人生で一番うれしい勝利だったと思ってます。その流れで全米オープンも優勝し記録も更新できて、すごくうれしいです。

――ギネス世界記録を更新することについて、改めてどう感じますか?

実際プレーしている最中は記録はそれほど意識してませんが、終わった後に、更新できたことは喜びに浸れることにもなります。自分自身、毎回これが最後のグラウンドスラムの優勝になるんじゃないかなと思うんですけれども、それをまた新たにとることができて、安心感と嬉しさとが混在した気持ちになりますね。

――グランドスラム後に投稿された国枝選手のインスタグラムを拝見しましたが、疲れていらっしゃったのが見て取れました。今は回復しましたか?

今は疲れが取れました。ただ、アメリカでプレーしている最中は本当に(疲れていました)。決勝戦の直前も、40分くらい前にちょっと目をつぶっただけでかるく寝てしまいました。なのであの状況の中よく勝ち切ったというところは、自分をほめたいですね。

Most Paralympic wheelchair tennis singles titles won vertical

――パラリンピックに向けて、いつから、どのようなことを課題にしてきましたか?

リオでの敗戦があったからこそ、今回の東京パラリンピックにつながっているという風に思っています。2016年に敗れて、すべてを変えて、テクニックも車いすもコーチもトレーナーも全員、全部を一新して臨んだこの5年間だったので、その5年間の集大成がパラリンピックだったと思います。オリンピック・パラリンピックがテレビでもより報道されるようになってきて、その言葉を聞くたびに自分自身もじりじりとプレッシャーもかかってきたかな、という風に思います。(準備では特に)メンタル面を意識しました。どうやって試合に入るか、試合中にどう気持ちを保つか、どういう心境でプレーするか……。そういうところが特にパラリンピックでは強い重圧がのしかかってくるので、そこがキーポイントになってくるということが経験上わかっていました。毎日のようにメンタルトレーナーのアン・クインさんとも連絡を取っていました。

――なぜここまで勝ち続けることが可能なのでしょうか。ご自身ではどう分析していますか?

周りの選手も年々レベルアップしているし、それに負けないくらいレベルアップしてきたことが大きいかなと思いますね。リオ、ロンドンの時の自分のレベルよりも間違いなく今のほうが強いし、引き出しも多い。いろんな場面にも対応できるメンタルもあるし。テニス選手として年々進化できているところが要素かなと思います。

――車いすテニスを始めてから恐らく20数年ほどになるかと思います。車いすテニス界はどのように変化してきましたか?

僕が始めたときは「え、そんな競技あるの?」って言うくらい、車いすのぼくですら知らなかったですし、もちろんパラリンピックという言葉にも耳馴染みがありませんでした。いざ車いすテニスやってみるとなっても、その時世界の選手がどんなプレーしているのか、全くわからなかったですよね。テレビももちろん、放送無いですし、YouTubeがあるわけでもないし……。そういった情報量ということに関しては、雲泥の差があると思います。パラリンピックという言葉も、今やみんながもう知っている言葉になったと思うので、それだけ環境は変わってきていると思うし、本当に全く違うと思います。

――障がい者と社会について、今後の課題はどのようなものが挙げられると思いますか?

今回のパラリンピックでも、共生社会とか多様性とか一つのテーマだと掲げていました。しかし、そういうことを意識しないような世の中になればいいなと思います。あまりにも「共生社会」とか「多様性」と言った言葉がパラリンピックに結びつき過ぎてしまうと、逆にスポーツとしての楽しみを奪いかねないのかなとも思っているので、その辺が難しいところではありますよね。なので共生社会とか多様性とか、そういった言葉すら無くなるような社会になってほしいな、と思うし、それこそが本当の共生社会なのかな、と思っています。僕自身もプレーしているときにそんなこと考えているかって言ったら考えてないし、やっぱりスポーツとして楽しんでもらえるような競技になって行くのが一番健全なんじゃないかな、と思っています。

――ギネスワールドレコーズでも、今年から身体、視覚、そして知的障がいを持つ挑戦者にも記録挑戦の機会を提供するように新たなカテゴリーとクラス分けができました。世界一を目指して活躍する、あるいは世界一というジャンルで楽しんでもらう場が増えるということについて、どう思いますか?

素晴らしいことだと思いますね。やっぱりいろんな方々にこのギネス世界記録に挑戦してもらえるきっかけがあるということはそれだけでも素晴らしいことだと思います。

――コロナ禍ではありますが、今でもギネス世界記録に挑戦している方は多くいらっしゃいます。世界一に挑戦する人に向けてメッセージをお願いします。

何事もチャレンジしてみることだと思って僕自身もずっとキャリアを積んできましたし、やっぱりチャレンジしないと何も始まりません。無理だと思うことでも、まずは最初の一歩を踏み出してみることです。それで僕は世界チャンピオンにつながったし、皆さんは世界記録につながるかもしれないので、まずはやっぱりやってみること、それを実現してほしいと思います。

――国枝選手の記録は、2021年11月17日発売の書籍『ギネス世界記録2022』の誌面にも掲載されます。