世界最大のアフロに後継者現る ニューヨーク女性が記録保持者に
アメリカ、ニューヨークのヘアサロンで、ビッグな出来事が起きました。なんとギネス世界記録タイトル「存命中人物最大のアフロ(女性)|largest afro on a living person (female)」を長年保持してきたエヴィン・ドゥガスさんが、その記録を受け渡す日がやってきたのです。
新たな記録保持者は、同じくアメリカのジェシカ・L・マルティネスさんです。

ギネス世界記録の日に、エヴィンさんは15年間保持し続けた記録を受け渡すために、ジェシカさんと対面しました。出会ったふたりの間に競い合いやいがみ合いなどは一切なく、アフロ同士として一致団結。現場は笑顔にあふれていました。
「私たちを見て皆さんに感じてほしいのは、私は自分を愛している。そして彼女も自身を愛している。そしてふたりとも、みんなが自分自身を愛せるよう働きかけていることです」とエヴィンさんはギネスワールドレコーズに語りました。
「これは競争じゃないの。愛だから」

ジェシカさんのアフロは、3人によって測定されました。測定結果は、高さ29 cm、幅31 cm、円周190 cmでした。円周は「存命中最も身長の低い女性」のジョティさんの約3倍もあるのです。

前記録保持者となったエヴィンさんはルイジアナ州出身。2010年にこの記録を達成し、2012年にはイタリアのテレビ番組において公式認定証の贈呈式が行われました。

高さ25 cm、幅26 cm、円周165 cmのアフロを誇り、ギネス世界記録の「ICONS」に認定されたエヴィンさん。当初記録を達成して以来、自身を愛し、自分の持つ身体をポジティブに見ること、自他の文化を受け入れるメッセージを発し続けてきました。
「記録保持者の仲間入りをしたことは特別なことです。なぜならギネスワールドレコーズはすべての記録に真剣に向き合っていることを知っているからです。X-Menみたいに、書籍に特異なスキルを持ったスーパーヒーローがたくさん登場して、私も"デカいアフロ"として出ているの。最高じゃない?」
15年も記録を保持し続けてきたエヴィンさんですが、いつか誰かにその座を受け渡したいと祈り続けていたそうです。しかも、プロモーション写真で使用した王冠を、その新たな記録保持者に渡せるようにと、2020年から保管し続けていたそう。
「私から引きはがされるんじゃなくて、受け渡したかったの。だからICONになれた時、今がチャンスだと思ったわ」

一方で、ジェシカさんはエヴィンさんに会えたことはとても嬉しいことだと言います。
「オンラインでもそうでしたが、人間味あふれた人でした。この瞬間をふたりで体験できてよかった。だって、より自分を誇ることができるし、特別な出来事なんだって実感させてくれるから」

ニューヨーク州ロックランド郡出身のジェシカさんは、刑事司法改革の擁護者、コンテントクリエイター、Somebody’s Auntieというブランドの創業者です。彼女のSNS投稿には「ギネス世界記録に申請するべきだ」といったコメントが多く投稿されことをきっかけに、今年、申請してみることにしたのです。

「記録を達成したと知った瞬間は、実感がわきませんでした。次第に理解していくと、すごいことになったと感じました。若かりし頃の私もきっと誇らしく思うだろうと思ったからです」
「私のような人間が、私のような髪型で、ギネス世界記録に載るのは素晴らしいことです。「多様性の反映」なんて、子どものころには分かってなかったけど、こういう髪の毛をメディアや一般社会で見かけないとはそのころからずっと強く感じていたんです」

「だからこのような記録に認定されたときは、ついにやったぞという気持ちになった。そしてこの記録挑戦はとてもとても難しかったの。それでもあきらめないでやり続けて、その難しいことができたことも誇りに思っています。私にはなんでもできるって感じるくらい、気分がいいです」

ジェシカさんによると、自身が生まれ持ったアフロをケアするルーティンを決めるのが大変だったと言います。幼少期は母親がケアをしてくれていたそうですが、年を重ねるにつれ、うねる髪と闘うのが困難になってきたそう。そこで「リラクサー(化学ストレート処理)」を使用することにしましたが、出費のみならず、ダメージまで増える結果に。減ったのは自信だけでした。
「私たちは裕福ではなかった。サロンに行くと彼らは私の髪の毛でブラシを壊していたし、髪の毛が多すぎると言って、リラクサーを2箱も使った。お母さんが2箱分の値段を払うっていうことよ。最悪の空気だった。恥ずかしかった」

中学生になってようやくサロン通いをやめたジェシカさん。それでも髪をストレートにするのは続けていたそう。大学生になり、ついにそれすらやめる決断をしたのです。
「もういいという気持ちになったときを覚えています。頭皮や髪がアイロンでピチピチ鳴る音にうんざりして、お母さんにノーと言ったの。そして最終的には、髪をストレートにすることを一切やめたの」

「大学1年のとき、いつものようにアイロンを当てて、"仕上がった自分"を鏡で見たの。12歳のころの自分を思い出したわ。これは私じゃない。私には個性があるんだ。そう思ってそれっきり、アイロンは冷めっぱなしよ」

すると、自然の巻き髪が戻ってきました。それをジェシカさんは大いに気に入りました。自信を持ち、自分のアイデンティを新たに感じることができたそう。ジェシカさんの母も、髪を束ねるお手伝いをするようになりました。
髪の毛が変わり、自分の可能性を実感するようになったジェシカさん。ギネス世界記録タイトルを狙ったらと言われるようになると、覚悟を決めたそうです。

髪の毛がここまで立派になるのには何年も必要でした。ずっと育て続けて、ここまで立派に美しくなりました。過去のように髪の毛を閉じ込め続けていたら、こんなことになることは一生気づかなかった。伸ばして挑戦する決断をして本当によかった ー ジェシカさん

ジェシカさんもエヴィンさんも、ヘアケアにまつわるエピソードを豊富に持っています。例えばふたりとも、このような髪の毛をどう扱っていいか分からない美容師さんに、髪の毛をボロボロにされた経験があります。

実は2025年2月、ジェシカさんは美容師に少し髪の毛を切られすぎて、記録達成ができなくなりそうになったそう。エヴィンさんによると、まだ理想のスタイルにするためにどれだけのカットが必要かという「アフロ数学」がまだ解明されてないと説明します。

エヴィンさんはジェシカさんにこのように語ったそう。
「誰もあなたの頭部に近づけてはいけないよ、と伝えました。万人がこういったナチュラルヘアをスタイルできるわけではないのだから」
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ジェシカさんによると、きつい編み方はせず、ツイストなど"甘撚り"の方が長さを保てると言います。また、ジェルやクリームを使いすぎて、薬品が髪の毛に蓄積しないようにしたほうがいいそう。一方でエヴィンさんは、一貫したルーティンを持っているといいと言います。

「髪質はそれぞれ理由があってそれを授けられたのです。それを大事な式典で披露したくないみたいなことを言う人も多いですが、それを美しく感じられるようになったらいいなと思います」と語るジェシカさん。
「そのままが美しいんだということを、特に若い子たちには知ってほしいです」

そして、エヴィンさんから感じ取った叡智と、ジェシカさんに対する敬意は、今後も胸に持ち続けるだろうとジェシカさんは言います。
「今を生きることが大事だと、ジェシカさんに伝えたいです。こうやってインタビューや写真撮影をすることが今後続いたとしても、それが当たり前と思ってはいけない。サロンで何度も経験してきたように、当たり前にあると思っていたものだって、瞬時に手元から消えてしまうことだってあるのだから」

エヴィンさんもジェシカさんも、ギネス世界記録に挑戦したいと思うなら、そう思った今こそやるべきだと言います。ジェシカさんはこう説明します。
「やらないまま終わるより、やって失敗した方がいい。だからやりたいなら、今すぐ立ち上がってやってみましょう。想像していなかった世界を切り開くかもしれませんよ」
