【鮮やかに染まった6mの爪】妻と共に“爪の人生”を貫き記録達成
ベトナムの男性アーティスト、ルウ・コン・ヒュエンさんは、なんと30年以上にわたって爪を切らずに伸ばし続けてきました。そしてついにギネス世界記録「両手の爪の最も長い男性|longest fingernails on a pair of hands (male)」 に認定されました。
その爪の長さは驚異の594.45 cm。平均的な大人のキリンの身長よりも長いのです。
この計測は、今年初めにギネス・ワールド・レコーズ編集長のクレイグ・グレンデイが、ベトナムのナムディン省にあるヒュエンさんの自宅にて行いました。
両手から伸び、複雑にねじれながら垂れ下がる爪は、ヒュエンさんが壁画を描く際についた色とりどりのペンキ跡で覆われ、まるでアート作品そのもの。
ヒュエンさんが爪を切らなくなったのは 34年前。きっかけは「父のようなシャーマン(祈祷師)になりたい」と思ったことでした。
「威厳のある見た目にしたくて爪を伸ばし始めたんです」とヒュエンさんは言います。


しかしその後、お父さんから「シャーマンの道は大変だからやめた方がいい」と言われたため、職業としては追わなかったものの、爪だけはそのまま伸ばし続けることにしました。
「今となっては、爪を切ることを考えるだけで気分が悪くなります。精神的にも肉体的にも、削ぐような感覚になるんです」
もちろん、爪が割れることもあるそうで、欠けた部分をリビングのキャビネットに保管しているそう。もちろん、これらの破片は記録にはカウントされません。


グレンディは「計測は簡単ではなかった」と語ります。爪の曲線に沿ってヒモを這わせ、そのヒモをまっすぐにして長さを記録するという、かなり根気のいる方法で測定しました。
2回の測定を行い、その平均をとった数値が公式記録となりました。左手の爪の長さは合計388.85 cmで、右手は合計205.6 cmでした。単独で最も長い爪は、左親指の127.5 cmでした。


この長さの爪と暮らすには、生活すべてに気を配る必要があります。
「雨が降ったら絶対に濡らせません。水を吸うと爪が柔らかくなり、すぐに折れてしまうからです」
「人混みではぶつかられないように常に警戒します。作業中も、一歩一歩が慎重です」
服を着替えるとき、寝返りを打つときですら気を抜けません。奥さんのティ・トゥアンさんが袖を通すのを手伝う場面も。


それでもヒュエンさんは、筆とペンキを手に取り、見事な壁画を描き続けています。その姿に、周囲の人は驚きと称賛の声を上げるそうです。
「みんな『その爪でなんでそんなに上手く描けるの!?』って言うんですよ」とヒュエンさんは笑います。


「人から『なんで爪を切らせないんだ』と妻はよく言われます。でも、これは私自身の選択です。そして妻はずっと支えてくれました」
「彼女の助けなしでは、ここまで維持することは絶対にできなかったでしょう。本当に忍耐強く、なんでも手伝ってくれるんです」
世界記録公式認定の瞬間、ヒュエンさんは静かに微笑み、家族は温かい拍手でその達成を祝いました。


グレンディは「ヒュエンさんには、爪を通じた精神性のようなものを感じた」と語ります。
実はギネス世界記録では、長い爪と“精神的な役割”には古くからつながりがあり、1960年版の記録には「名もなき中国の僧侶」が最初の記録保持者として紹介されています。
「ヒュエンさんは、とても穏やかで精神性のある人でした。彼はまさにその伝統を体現しています」とグレンディは語りました。

