ーー今回、ギネス世界記録に認定されてのお気持をお聞かせください。
4連覇の時もそうだったんですけど、私自身は凄いことをしたという実感がなく、ただ純粋にレスリングが好きでここまで追求してきた結果だと思います。
ギネス世界記録は小さい頃から知っていたものですし、凄い人しかとれないこともわかっているので、それを自分がいただいたことは不思議な気持ちです。
ーー世界中が驚くホントウに凄いことを達成された伊調さんですが、ご自身では、なぜこれほどまでの偉業が達成できたとお考えなのでしょうか?
その答えはとてもシンプルで、「続けてきたから」なのだと思います。
ーー2004年のアテネ五輪からの4連覇、この間には常人では考えられないようなトレーニングをされてきたと思うのですが、1つのことに集中して、道を突き詰めていくということは、伊調選手にとってどんな意味のあることなのでしょうか?
そうですね。率直に言えば、これは、自分の意志だけでここまで続けてこられたわけではないのです。続ける過程においては、当然ながら、色んな人の言葉や言動だったり、テレビに出ている方や周りの方々の影響もあったのです。ですから、自分1人で生きてないなってことを改めて実感します。
でも要所要所で「この時はこの人の言葉が1番自分の背中を押してくれたな」とか「続けることを選んだ1番のきっかけになった人だな」と思うことならあります。でも、繰り返しになりますが、自分の意志だけで続けてこられたわけではありません。
その時その時で「何か」があって、その「何か」に自分は救われてきたのだと思います。それでも最終的には、「自分で選択して続けよう!」ってなるんですけど、それまでは色んな出来事や人に背中を押してもらっています。だから、考えてみれば、自分でも不思議なのです。
ーー勝つことではなく、技術の質や幅をさらに高めるというように変わったのですね。
はい。そっちの方に重きを置くようになりました。それまでは「勝ってなんぼ」、「絶対負けない」という気持ちが1番強くて、そこが1番のモチベーションでした。それが、「良い試合をしたい」、「自分の思うようなかたちでポイントを取りたい」と考えることが楽しく面白くなってきて、そこで新しいやりがいが見出せたのだと思います。
ーーそれは現在でも、興味の中心にあるのでしょうか?
北京以降そういうことを重心的に練習するようになってからは、「オリンピックで3連覇、4連覇する」というよりも、良いかたちで終わりたい、良いカタチでオリンピックで闘って沢山の人に観てもらい、と考えるようになったんですね。
「伊調のレスリングは面白いな」とか「レスリングというのは、これだけ楽しいものなんだ、やってみたいな」と思ってもらえるようにしようと、「自分のレスリングを観てほしい」と今は思っています。そうすることが、周りの人に恩返しにもなると思うんですね。私自身はそんな風に変わりました。