ラッキー・ダイアモンド・リッチ:地球上で最もタトゥーだらけの男

彼の身体に施されたタトゥーにかかった時間は合計1000時間以上。ラッキーは地球上で一番タトゥーに包まれた男だ。

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その身体にぎっしりと詰められた芸術により、ラッキー・ダイアモンド・リッチは「存命する最もタトゥーに包まれた人間(男性)|most tattooed person living (male)」としてギネス記録に登録された。

グレッグ・ポール・マクラーレンとしてこの世に生を受けたラッキーは、ストリートアーティストでもあり、パフォーマーでもあり、ギネス記録保持者でもある。また、彼は我々が出会った中で、最もユニークな見た目を持つ人間だ。

剣を飲み込んだり、チェーンソーをジャグリングしたり、はたまた約3メートルの一輪車に乗ったりするだけではないのが、ラッキーである。彼のつむじからつま先までが、ぎっしりタトゥーで埋まっている。

地球上で最もインクに包まれた男

オーストラリア、クイーンズランドにあるブリスベンで生まれたラッキーは、更生も兼ねて2007年にサーカスに入団した。

世界を飛び回り、パフォーマンスをすることでもらえる給料もなかなか良かったラッキーは、行くところ先々で注目を集めた。

年齢を重ねるにつれ、ラッキーはどんどん自分の芸を磨いては、またその振り幅を広げていった。

「チェーンソーでジャグリングできたり、剣を飲み込めたり、3メートルの一輪車に乗れたりするということは、多分生まれつきツイてるんだと思う」とラッキーは語る。

 

「ダイアモンドという名前は、原石のようだと自分のことを褒めてくれた友達の言葉に由来している。リッチは、僕の魂が豊かだから」

もちろんパフォーマーだけでなく、ラッキーはもちろんタトゥー人間としてもその名を知られる。

 
タトゥーだけにとどまらず、ラッキーは数々のピアッシングをし、耳たぶはピアス穴で拡張され、また歯さえも銀のベニアを埋めている。
 

それでもやはり、ラッキーの一番の特徴は、皮膚に余すことなく幾十にも重ねられたタトゥーだろう。

タトゥーの上からタトゥー

ラッキーが初めてタトゥーを身体に入れたのは、1987年、まだラッキーが16才の頃だった。小さなジャグリングクラブのデザインを臀部にいれた理由は、母親かに見つかるのが怖かったからだと言う。

「一度に一回ずつ。そうやって皆んなタトゥーを入れていく」と話すラッキー。

最初のタトゥーを入れてから次にタトゥーを入れるまでには、2年の時間があった。

「18歳の時にまたタトゥーをいれた。それからは入れられるだけ入れるようになった」とラッキーは続けた。

計算すると、ラッキーがタトゥーを全身に入れるためにタトゥーアーティスト達が要した時間は1,000時間以上(日に計算すると41日)。彼の皮膚上でタトゥーが入っていないところは一切無い。

ラッキー曰く、「世界中のアーティスト達を信用しているから、基本的には『どうぞ、ここの部分を好きなようにしてください』と身を任せている」

長年に渡り、ストリートパフォーマーとして世界中を回ってきたラッキー。そこで得た収入は、ほぼタトゥーに使われていると言う。

彼が最初の『ボディスーツタトゥー』を入れたのは、28歳の時。ボディスーツタトゥーとは、一つのテーマを元に上半身全て、又は全身に入れるタトゥーのことだ。

 
その後はタトゥーの上にタトゥーを重ねるようになったラッキー。この幾十にもレイヤーを重ねる作業と、忍耐力によって、ラッキーは「存命する最もタトゥーを全身に入れている男性|most tattooed person living (male)」の称号を手に入れた。
 
様々なデザインを入れている彼だが、ここまで来たら全身ほぼ一つのタトゥーと言っても良いとラッキーは自分で笑う。
 
「いくつタトゥーを入れているかと聞かれたら、地球上で一番大きいやつを一つ入れていると答える」と言うラッキー。
 

彼のタトゥーの好みはこの何年かで変わっていったと言う。元々は全身黒のタトゥーで包まれていたが、最近は白のインクも好んでいると言う。首にある、カルマと英語で書かれた、一際目を引くタトゥーも、白のインクである。

一番新しいのは、服を着ていなくても袖に見えるような真っ黒のデザインを、すでに彫ってあったタトゥーの上にいれたものだ。

現時点でラッキーは全身の200%以上をタトゥーで包んでいることになる。まぶたや、足の指の間の薄い皮や、外耳道の上部、また歯茎にまでタトゥーをほどこしている。

彼はその外見から、厳しい言葉を投げつけられる時もある。

「それぞれ皆反応が違う。天気みたいなもので、予想もできないし、コントロールもできない。ただやりくりするだけ」とラッキーは話す。

「他人の意見で自己肯定感が左右されることは無い。今日の自分が好きなだけ。自分を好きになるために、結果的に全身にタトゥーを入れなきゃならなかったっていうのは自分でも面白い発想だと思う」

この10年タトゥーを入れていないと言うラッキー。今や彼自身タトゥーアーティストとして、人にタトゥーを施すことで、タトゥーへの愛を実感している。

幼い頃、ギネス世界記録の本を見て、自分がそこに載ることを夢みたラッキー。

公式に認定されて以来、子供たちから写真を頼まれたり、話しかけられたりすることを誇りに思っていると言う。

また、この記録の初保持者であることも、彼がその業績を誇りに思う理由の一つだ。

タトゥーに対する偏見や、それによる様々な困難に立ち向かわなければならなかったであろう過去の申請者たちについて、彼は思いを馳せる。

 
しかし現代社会において、人体改造は文化として受け入れられるようになってきており、今がこの記録を手にするにおいて一番のチャンスだろうと彼は考える。
 

「タイミングが良かったんだ。ラッキーだったんだよ」と彼は笑う。

再び訪れる幸運(ラッキー)

旅する大道芸人として、またタトゥー人間としてその名を知られることを十分に楽しんだラッキーは、最近では普通の幸せの素晴らしさを噛みしめている。30年以上パーティーシーンで芸を披露してきたラッキーだが、同時にそういった派手な場所は、時にラッキーを健康的な生活から遠のかせることもあった。

現在ラッキーは、建築会社で働き、アパートに2匹の犬と、愛するパートナーと住みながら、新しい人生を構築しつつある。ユニークな見た目を持ちつつも、彼は自分は他の人と何ら変わらないと考える。「周りとの違いなんてない。ただタトゥーがたくさん入っているだけ」とラッキーは話す。

他の人と同じように血は流れるし、他の人と同じように、日々、生活で起こる問題に頭を抱えているんだ。

- ラッキー・ダイアモンド・リッチ