マックス・パーク:四方形の不思議な世界

スピードキューブのチャンピオンが破るのは記録だけでは無い。彼のミッションは、発達障害を持つ全ての人々へのインスピレーションとなり、既存の固定観念を破ることだ。

チェスやドミノを代表するボードゲームのように長い歴史があるわけでも、サッカーやフットボールのようにメディアで大々的に捉えられることもない。だが、スピードキュービングは、確実に今世の中で注目されている競技の一つである。

エルノ・ルービックというハンガリー人の建築学教授が。1971年に最初のルービック・キューブ(当初はマジック・キューブとして知られていた)を発明して以来、私たちはこの複雑なパズルをいかに早く解くかに夢中になってきた。

2022年8月現在、3列x3列のルービックキューブの最速記録は3.47秒である。

スピードキュービングとは、様々な列の色を、キューブを回転することによって合わせていき、その秒数を競うスポーツだ。一番有名なものは3列x3列x3列のものだが、最近はサイズや形が違うものなども流通している。

参加者は長い期間練習し、また大会の審判も非常に厳しい。公式大会はオリンピックと大差無いと言っても過言では無いだろう。ただおもちゃで遊ぶという概念を超えて、スピードキュービングは今や競技となっている。

毎年大勢の参加者が大会に出る中、ひときわ世界の注目を引いたのは、アメリカ合衆国カリフォルニア州出身、マックス・パークだった。

韓国系アメリカ人のこの神童は、ルービック・キューブのスキルを、全く新しいレベルにまで昇華させた。紛いもなく彼は、今世界で一、二を争うスピードキュービングの選手である。

2022年で21歳になるパークは、その10代を通してギネス世界記録を破り続けてきた。


以下は2022年8月15日現在のマックスが保持する世界記録である。

カテゴリタイプ大会   結果 (分:秒)
日付
4x4x4
単独ベイエリア スピードキュービング 29 PM 202216.792022年4月3日
平均ベイエリア スピードキュービング29 PM 202219.882022年4月3日
5x5x5単独フロリダ ビッグ&ブラインド&タイム202233.022022年3月13日
平均ベイエリア スピードキュービング34 – サンラモン202238.422022年7月3日
6x6x6単独キュービングUSA 南東チャンピオンシップ 202259.742022年7月31日
平均キュービングUSA 南東チャンピオンシップ 20221:09.232022年7月31日
7x7x7単独キュービングUSA キュービングナショナル20191:40.892019年8月1日
平均ヒューストン ウィンター 20201:46.572020年1月25日
3x3x3 one-handed単独ベイエリア スピードキュービング20 20196.822019年10月12日

パークが自閉症と診断されたのは、2歳の時だった。だがその診断によって、彼とその家族が記録保持の夢を諦めることはなかった。

スペクトラムを持つ人にのみならず、持たない人にとっても、今や憧れの存在となったパーク。

スピードキュービングの権威であるワールド・キューブ・アソシエーション(WCA)によると、現在パークは9つの世界記録を保持している。

最初にパークがスピードキュービング界に頭角を現したのは、7列x7列x7列のキューブを、1分40秒で完成させた時だ。当時の世界記録は2分。

キュービング界の権威であるエリック・アッカースダイクは、この記録に対し、今まで見てきた中で一番印象に残っており、また長年破られることの無い数字だろうと答えた。

パークのキュービングへの情熱を長年支えてきた両親、ショーンとミキは、こう話す。「キュービングはマックスにとって良いセラピーであり、また社交性のスキルも上がった。昔はペットボトルも開けられなかったが、ルービックキューブへの情熱は冷めることを知らなかった」

そんな息子の様子を見た母親は、ルービックキューブを勉強し、パークに教え始めた。そして10歳になったパークは、キュービング大会でMITとカリフォルニア工科大学の大学生二人を見事打ち負かした。

それ以来パークは記録を打ち破り続けている。新記録を更新するだけでなく、スポンサーも付き、世界中の大会を飛び回るようになった。また、パークはルービック会社の公式アンバサダーも務めている。

2020年、パークの知名度を大きくあげたのが、ネットフリックスのドキュメンタリー、『スピード・キューバーズ』だ。

オーストラリアの記録保持者、フェリクス・ゼンデグスと共に、パークの物語はこの映画で大きくフューチャーされることとなった。

大会ではライバル同士の二人だが、その絆は深い。

二人が最初に戦ったのは、2017年の大会でのこと。

この大会について、ゼンデグスはこう思い出す。「マックスの名前は、一緒にUSナショナルズに行った人たちから聞いていたが、それでも謎に包まれた人物という印象だった」

そして2017年、パークは3列x3列x3列の世界平均記録を破った。

同じ年、パークはパリの世界大会で優勝した。彼の名前が決定的になった瞬間だ。

ゼンデグスは、コミュニケーションが苦手なパークが、初めてサインと写真をお願いした人物だった。

パークの目に、ただ者ではないものを感じたと言うゼンデグス。

4年後、パークがゼンデクスの記録を破った時も、ゼンデグスは彼を心から称賛した。

それ以来パークは、記録を破るたびに、ゼンデグスから祝勝のメッセージがやってくると言う。

「二人はライバルである以前に友達です。マックスにとってフェリクスのように尊敬できる人がいるということは、本当に素敵なことです」と語る母親のミキ。

父親のショーンも、「彼はこれからもマックスにとって憧れの存在であり続けるでしょう。」と頷く。

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最近では、キュービング・ワークアウツという活動にも熱心なパーク。このワークアウトは、細かい運動スキルや、コミュニケーション能力、非言語コミュニケーションを鍛えるのに役に立つと言われている。

この活動を通じて、自信と自律性が身についたというパーク。彼の両親は、世界大会優勝と言う忘れ難い瞬間について、GWRにこう語る。

「息子の優勝を誇りに思いました。ですが、それ以上に記憶に残っているのは、息子が認定証をもらった際、横にいる人たちを見て、周りの人たちと同じように認定証の位置を微妙に調節した瞬間です。この記録で世界の人々に希望を与えられたことこそが、私たちにとっての勝利だと思います」

世界大会で表彰台に登ったことなんて置いといて「今表彰状を調節したの見た?」と私たちは喜びました。私たちにとって、このことこそが何よりのトロフィーだったのです。

- ショーン・パーク

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世界記録を更新しながら、またパークは『AO100』(アベレージ・オーバー・100 ソルヴス)という新しいトレンドをキュービング界にもたらした。

これは、100回キューブを解いて、自身の最短時間と最長時間を記録し、平均を求めるという方法だ。

この方法によって、誰が本当にキューブを解くのが上手いのかの判断がつきやすくなり、またこの記録は新しいキュービングを愛する者たちにとって、新たな栄光のバッジとなっている。

 
「マックスはギネス世界記録の本に載ったことを非常に喜んでいます。彼は、ベストになること、またそれが数字として計量化できることに人生を捧げていますから。ランキングに名前が載ることは、彼にとってはとても幸せなことだと思います。彼のモットーは、『考えるな、ただ解け』です」そう父親のショーンは我々に語ってくれた。

パークの最新の記録については、彼のインスタグラムツイッター(@maxfast23) 、もしくはYouTubeチャンネルにて確認できる。これからの記録更新にも乞うご期待だ。