ビリディアナ・アルバレス・チャベス:最高峰トップ3の山に登った最速タイム(酸素補給有り)

世界の最も危険な山々を登るラテン系登山家のビリディアナ・アルバレス・チャベスは恐れを見せない。

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困難を乗り越えることをパッションとするチャベスにとっての人生の使命は、自身の冒険を通じて、世界中の若い人たちに「できないことなんてない」と伝えることだ。

メキシコのアグアスカリエンテスで育ったチャベスは周りの自然にいつも魅了されていた。チームスポーツは常に選択肢としてあったものの、彼女の心に一番響いたのは自然と肉体的な強さの融合であった。生まれつきのアスリートである彼女にとって運動はいつも非常に重要であり、大人になると日常的に行っていた。

驚くべきことに、登山というスポーツは彼女が後年になってから好きになったものだ。登山にのめり込むきっかけとなったのは実はランニングであった。

これらの重要な瞬間は、世界の最も危険な山々を登頂し、ギネス世界記録保持者として歴史に名を刻んだ彼女にとって欠かせないものであった。

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Viridiana-hugging-mountain

チャベスの功績全般において鍵となるのはモチベーションだ。恐怖心と戦い、粘り強さを維持するために、彼女はモチベーションを1つのツールとして使うのだ。

まさにこのスキルが、8,848mの高さでそびえたつ世界最高峰のエベレスト(別名:サガルマータ、チョモランマ)、そして悪名高い第2位の高峰K2(8,611m)、そして最後は第3位の高峰カンチェンジュンガ(8,586m)へわずか1年364日で登頂することを可能としたのだ。

情熱を見つけるまで

 

チャベスはもともとロッククライマーではなかった。最終的にクライミングに彼女を導くこととなったのは実は陸上競技へのパッションだった。

彼女はまず達成可能なゴールを設定した:10 kmランを完走すること。

10 kmへ向けてのトレーニングは毎日続き、そのうち彼女は走ることがとても好きになっていた。そんな彼女は、最初のレースを完走した直後にハーフマラソン(21.01975 km)とフルマラソン(42.195 km)への参加を申し込んだのだった。

しかし意欲的なラテン系アスリートであるチャベスにとってランニングだけでは満足できなかった。彼女はさらなるステップアップを目指し、ワールド・トライアスロン・コーポレーション主催の長距離トライアスロンレースの1つであるハーフアイアンマンを完走することを決意したのだ。

レースの名に含まれる「70.3」が意味するのは1.2マイルのスイム、56マイルのバイク、13.1マイルのランの合計距離だ。

さらにもう1つの大きな目標を達成したチャベスは、陸や海は自身の運動能力を試す土俵としてもう不十分であると感じた。代わりに、空を目指さなくてはならないと感じた。

エベレストを登頂したチャベス 
山頂への道のりは簡単ではないが彼女は決してあきらめない。
世界第4位の高さを誇るローツェを登り笑顔を見せるチャベス
アルゼンチンのアコンカグアの頂上から見える景色を楽しむチャベス
そして、かつては軽いジョギングを楽しんでいたチャベスは、初めて自分で購入したハイキング用品を身に着け、岩崖の側面を登りながら、体全体で重力と戦うことの意味を、身をもって知ることとなった。
 
最初のレースを完走してからわずか2年で、彼女はメキシコの最高峰ピコ・デ・オリサバ(5,636m)を登るまでになった。
 
クライミングというスポーツと繋がることができたのはまさにその瞬間であった。その気持ちをうまく表現できないと言う彼女は、こう語った。
山は私が自分への挑戦に臨み、自分自身をより深く知ることのできる場所です。
 

記録更新

チャベスが「最高峰トップ3の山に登った最速タイム(酸素補給有り、女性)|fastest ascent of the top three highest mountains with supplementary oxygen (female)」の記録を更新するまで、記録は韓国のゴー・ミスンの持つ2年2日であった。

この新しい登山への情熱をさらに高めたいと感じたチャベスにとって、ギネス世界記録を更新することは、彼女の限りない野心を満たすのに理想的な方法であった。

彼女の旅は、2017年の世界最高峰エベレスト登頂から始まった。

そのわずか1年後には、世界第2位の高峰であり、奪った人命の数では"最も危険な山"と言われるK2を登頂した。アメリカの登山家ジョージ・ベルはかつてK2について「人を殺したがっている。非情の山だ」と述べている。

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世界最高峰としてエベレストがよく注目されるが、実は最も危険なのはK2なのである。地球上で最も高い5つの山の内、登山者が注意しなくてはならないのはK2だ。なぜなら4人の登頂者に対して1人の死者が出る山であるからだ。

それでも、大いなるモチベーションを糧にチャベスは2018年にK2を登頂した。トリオ最後となる3つ目に制覇したカンチェンジュンガを正式に登頂したのは2019年5月15日。その日、チャベスは1年364日という驚異的な期間で遠征を完了してギネス世界記録保持者となり、歴史の1ページに自身と自国の名を残したのである。また、それだけでなく、K2登頂を成功させた初めてのラテンアメリカ出身の女性となったのだ。

 
チャベスはこう語る。「私の登山家としてのキャリアは、運動するという単純で個人的なチャレンジというあまり他には見ない自分の鼓舞目的で始まりましたが、最終的にはオフィスでの仕事を辞め、山の魔法を感じるために快適さを犠牲にするまでに至りました。それは、夢というものは小さい頃から一生目指し続けなくてはならないというアイディアを覆し、世界記録更新のよう「達成不可能な夢」も目標を設定さえすれば誰でも達成できることを証明してくれました。」
 
彼女の次の目標は世界最高峰トップ14の山を制覇し、北米出身として初めてそれを成功させることだ。彼女は既に5つの山の登頂に成功していて、さらに多くの山を制覇するに向け勢いをつけている。

登山の他に...

 

登山に加えて、チャベスは若者向けの会議やイベントでスピーカーとして活躍し、パラダイムシフトの大事さを伝えるメッセージを発信している。

彼女は仕事で感情的知性や前向きな姿勢、鍛錬、粘り強さの重要さを強調する。


様々な山脈への遠征の中でチャベスはネパールやパキスタン、中国などを含む世界各地を旅することができた。

彼女はそれらの旅から得られた学び、発見、インスピレーションを、出会った人々にシェアすることを使命とし、「限界とは、個々が心の中でつくりあげたものでしかない」という信念を強めている。


チャベスは、標準を高く設定し続けることが、世界中の女性やラテンアメリカ人にとって自分たちの情熱を追求する励ましとなることを望んでいる。

限界とは、個々が心の中でつくりあげたものでしかない

- ビリディアナ・アルバレス・チャベス

タンザニアのキリマンジャロの頂上に立つチャベス
ネパールのマナスルの頂上で景色を楽しむチャベス
ビリディアナ・アルバレス・チャベスの偉業は、書籍『ギネス世界記録2022』の130ページに掲載されている。
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