jack brockbank split image

ギネス世界記録・公式認定員のユニフォームを16年間着てきたジャック・ブロックバンクは、自分のキャリアの長さ自体が記録になるのでは、と冗談交じりに話します。

「今のところ、誰よりも長くやっているのは間違いないと思います」と、語るブロックバンク。「僕への認定証はどこにあるんですかね?」

社内で認定以外の仕事をしている人を除けば、ブロックバンクは誰よりも長く、あの有名なクリップボードを持ち運んでいます。

ギネスワールドレコーズの舞台裏を紹介するこのコーナー。今回は、そんなブロックバンクに、認定員になるために必要なことを教えてもらいます。

jack brockbank in his adjudicator uniform

今まで見てきた信じられないような出来事や、また、そこまで喜ばしくないような経験についても、熱心に語ってくれました。

ギネスワールドレコーズでのキャリアを本社でスタートさせたブロックバンク。

当時は、オフィスの全員が記録達成を認定する訓練を受け、ローテーションを組んで世界中を旅し、「Officially Amazing」と宣言していました。

現在はオフィスでの仕事から離れたブロックバンクですが、ストップウォッチを手放そうとは思っていないようです。

「言うまでもなく、この仕事はとてもユニークなものです。よく聞かれるのですが、私にとってこの仕事の最大の魅力は、卓越した人間性と、達成の瞬間を目撃できること、信じられないことをする素晴らしい人々、そして、そこから生まれる全ての物語の場面に直接立ち会えることです」と語るブロックバンク。

「認定員として行ってきた全ての旅は、私が見てきた素晴らしい人々や信じられないような瞬間と同様に、比類のないものです」

正直言って、世界でも最高の仕事のひとつだと思います。

ブロックバンクは、初めての認定を、昨日のことのように覚えていると言います。

1分間で最も多くのシャンパンボトルをサーベルにした記録を認定するブロックバンク

ブロックバンクが、「最長のグラフィティの巻物|longest graffiti scroll」を見るためにルーマニアを旅したのは、2007年のことでした。

「本当に緊張したのは、人前で話すことでした」と、ブロックバンクは告白します。

「ステージがあり、コードレスマイクが私の手を突き刺すようで……。しかし、そのような状況でも、ブランドを背負って、全員の視線が自分に集まるとき、何かが起こるんです。そして、もうやるしかないと頭が切り替わります」

それでも、何年経っても、緊張癖は治らないというブロックバンク。

最大の海賊の集会を認定するブロックバンク

「毎回、ちょっとした舞台恐怖症や緊張はありますが、意外とそういう緊張は大切なことでもあると思います」

「緊張すると、背筋が伸びて、それにふさわしい重厚感が出るんです」

ほとんどメソッド演技のようなものだと話すブロックバンク。

「自分自身になるためにそこにいるのではないんです」とブロックバンクは続けます。「常に、ギネスワールドレコーズになるためにいるんだ、と自分に言い聞かせています 」

審査で記録達成を伝えるブロックバンク

ブロックバンクが認定員として直面した最も困難な仕事のひとつは、イギリスのクイズ番組「ポイントレス」のセットです。司会者アレクサンダー・アームストロングが、彼を笑わせようとする中、真顔を保つのが大変だったと振り返ります。

「彼は僕が笑ったり、公式から外れた返答をしたり、キャラを崩すように、あらゆることを試みていました。でも、なんとか平静を装いました」

ブロックバンクは、ブリテンズ・ゴット・タレント、ブルー・ピーター、ポール・オグレディ・ショー、ワン・ショー、ディス・モーニング、リアリティ・シリーズ『The Only Way Is Essex』などのイギリスの番組で、長年にわたって何度もテレビ画面に登場してきました。

しかし、彼がこれまで見た中で一番驚いたことは、テレビカメラから遠く離れた場所で起きたと言います。

2013年、インドのアッサム州で、「音楽作品で使われた楽器の最多数|most instruments used in a piece of music」を目撃する機会に恵まれたブロックバンク。

315種類の楽器を持つ476人の演奏者が、数々の受賞歴を持つ映画の音楽監督、ルパム・サルマーが作曲した美しい楽曲を演奏するのを目の当たりにし、「謙虚な気持ちにさせられた」と言います。

そして、楽器の名前を一言口にすると、その楽器の演奏者が演奏をしてくれるという特権を楽しみました。

190リットルの樽を作る最速タイムを認定したブロックバンク

しかし、物事は常に上手くいくとは限りません。

ブロックバンクは、記録挑戦の失敗を宣言し、イタリアの山中に取り残されたこともあります。

「ブーイングと罵声が飛び交い、みんな振り返らずに去っていきました。予想外だったのは、帰りの送迎をしてもらえなかったことです」

「山中に取り残されたような状態だったのですが、幸いにも通りすがりの人が同情してくれて、地元の町まで乗せていってくれました。車でもかなり長いドライブだったので、その人が現れなかったら、認定員の制服を着たまま、ずっと山中を歩かなければならなかったのかもしれないと考えると、ぞっとします」

1,000枚のパンにスプレッドを塗る最速タイム(10人チーム)を認定するブロックバンク

想像しただけで、私たちもブロックバンクに同情してしまいます。

ですが、こうした話を聞いても、彼がいかに自分の仕事を愛し、制服を着ることに誇りを持っているか、よくわかります。

「中には、達成したら大スターになるような、象徴的な記録もあります。その記録でキャリアを積んだ人も見てきました。」と語るブロックバンク。

「記録が認定されるとお金がもらえるのかとよく聞かれますが、そんなことはありませんし、重要なのはそこではありません」

「何かで世界一になった 」と公式に認められることが、賞賛に値するのです。

海賊の大集会で、ノートをチェックするブロックバンク

趣味の範囲ではありますが、ブロックバンク自身も記録更新に興味があるようです。

「スタッフパーティーでは、よく記録更新に挑戦しました」と話す彼。

「入社したての頃、爪痕を残そうと、「1分間で食べたリンゴの最多数|most apples bobbed in one minute」という記録を打ち立てました。ギネスワールドレコーズの職員は記録保持者になることは許されないので、これは「職員記録」と呼ばれていました」

「もちろん、私が達成した数字は、その後、完全に打ち破られましたけどね」とブロックバンクは笑いました。

このタイトルの現在の記録は37個で、記録保持者はチェリー吉武さん(日本)。ブロックバンクがこの記録を奪い返すためには、まだまだ練習が必要なようです。