
リー・レッドモンド:両手に最も長い爪を持つ女性
ギネスワールドレコーズでは、記録保持者やゲスト、そしてスタッフに記憶に残っている記録を聞くことがあります。そのなかでよく返ってくる答えのひとつが最も長い爪ーーこれは、ギネス世界記録の代名詞といっても過言ではありません。
歴史ある爪の記録において、特に多くの人々の印象に残っているのが、アメリカのリー・レッドモンドさんです。30年ものあいだ爪を手入れし続け、ついには両手に最も長い爪を持つ女性として、世界一に輝きました。
一覧に戻るリーさんの爪の長さがピークだった2008年、全ての爪を合計すると全長8.65 m ……なんとマイクロバスを超える長さ!最も長かった爪は、90 cm ほどあった親指の爪でした。
爪を伸ばし始めたきっかけ
リーさんの世界一への挑戦が始まったのは1979年。そのときの爪の長さは、5 cm 以下でした。彼女は切るのをやめ、曲がったり折れたりするまでどれくらい伸ばせるか試してみることにしました。しかし、彼女のケアが功を奏し、爪は大きな弧を描くように伸び続けていったのです。
ギネスワールドレコーズ60周年を記念して行われたインタビューで、クレイグ・グレンディ編集長は、リーさんの爪についてこのように語りました。「リーさんの爪は美しくて、とても特徴的でした。」
リーさんが爪を切らなくなってから19年、両手に最も長い爪を持つ女性としてギネス世界記録に認定されました。2003年当時に計測した合計の長さは7 m 51.3 cm でした。
世界一長い爪とともに生活すること
記録を達成すると、リーさんのストーリーは世界中で知られるようになりました。その当時、爪を切り落としてしまうということは考えなかったそうです。
「不思議なことに、この長さでも自分の一部なのです。」
しかしそれをケアするのは至難の業。リーさんは毎日、爪に温かいオリーブオイルをつけ、さらにネイルハードナーを丁寧に塗っていました。
ケアを終えたら、ギネス世界記録の本でも出版された、あの金色のペイントを爪に塗りました。
2007年のABCとのインタビューで、リーさんは、爪が毎年1.5インチ(約3.8 cm)ほど伸びていると語りました。
リーさんの医者によると、万が一緊急時に避難する必要があったら、その爪を食料にすることができると言いました。なぜかというと、爪には彼女が3か月生き延びるために必要な栄養素が入っているからといいます。
彼女がギネス世界記録タイトルをきっかけにはじめたことのひとつは、モチベーションに関わる講演でした。
「最もやりがいがあったのは、中学校に行って自尊心について話をしたことです。そこで、人を傷つけない限り、自分が人と違ってもかまわないと伝えるんです。彼らは本当に、自分を肯定しなければいけないのです。」
「私は爪以外の特徴を持っているから、爪だけで私を判断しないで」と。
ギネス世界記録の編集長、クレイグ・グレンディによると、多くの人々が爪の長さで世界一を獲得した人に興味を持つのは、記録保持者が自分の意思で伸ばすことを決めたからではないかと考えているのだとか。
それにしても、そこまでに長い爪を両手に伸ばす生活は、どのようなものなのでしょうか。リーさんによると、爪が長くともお茶を作ったり携帯電話を使ったり、子どもの髪を切ったりすることもできていたそうです。
起きてしまった事故
リーさんは、自分は爪で守られていると考えていたそうです。しかしその爪は2009年に破壊されてしまいます。
彼女が助手席に乗っていた車が、コントロールを失い、他の車の側面に衝突してしまったのです。リーさんと運転手は救急車で運ばれました。大事は逃れたものの、彼女の爪は事故に耐えることはできませんでした。
事故のあと、リーさんはこのように語りました。「爪を失ったのは、自分の人生で最も衝撃的な出来事でした。たしか私の孫が言った言葉だと思うのですが"あなたの赤ちゃんのような存在で、30年も大切にしてきたのに、ほんの数秒で失ってしまうなんて"……。」
しかしリーさんはポジティブでした「爪が無くなってしまって気になったのは、自分のアイデンティティのひとつが失われてしまったこと。でもこれはいつも言ってきたことなのですが、私の特徴は爪だけではないのです。:
リーさんは爪の一部を残していますが、過去のように長く伸ばすつもりはないそうです。それもそのはずーーなぜなら、伸びるのに30年かかってしまうからです!
ちなみに爪の大部分を失う前、リーさんはミシガンでギネス世界記録の公式認定員とともに「両手に最も長い爪を持つ男性」の認定のため、挑戦者のメルヴィン・ブースの爪を測りました。9.05 m あったメルヴィンさんの爪は記録達成となりましたが、彼は残念ながらお亡くなりになってしまいました。
当日に撮影された写真は、世界で最も人気のあるギネス世界記録保持者へのトリビュートとなったのではないでしょうか。
76歳になったリーさんは、孫やひ孫を多く持つ大家族の一員。退職後の生活のほとんどは、その家族と一緒にすごしているそうです。