アメリカでは、誰もがなじみのある、あのメロディー。

季節は夏、太陽がギラギラ照りつける。あなたは、スプリンクラーの間を駆け回っている子供かもしれませんね。近所の公園では、丁度キックボールの試合が始まる頃かも。あるいは、ポーチの上で友達とくだらないおしゃべりしている時かもしれない。

そうして、あの音楽が聞こえてくるのです。「チョコレート?ファイアクラッカー?チップウィッチ?何でもあるよ!」 トラックが近づいてきて、あのメロディが聞こえてくれば、火に集まる蛾のように、あなたはあっと言う間に引き寄せられてしまいます。『アイスクリームのおじさんが来た!』

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そしてこの67年間、ボストン地区で"アイスクリームのおじさん"と言えば、アラン・ガンツさんです。アランさんは、 「アイスクリーム屋さんとしての最長の職歴」というギネス世界記録を更新し、この業界でもとてもユニークなおじさんとなりました。

アランさんがお父さんのトラックに乗って一緒にアイスクリームを売り始めたのは、1947年、10歳の時でした。二人はマサチューセッツ州ボストン地区のすぐ近郊にある、エベレットやモルデンといった町でアイスクリームを売っていました。アランさんは19歳になるまで、お父さんと一緒に働き続けました。その後22ヶ月間軍に従事し、戻ってからは1度も途切れることなくアイスを売り続けてきました。

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「一番の想い出か。」サレム・ニュースからの質問に、「私は、ただただ、子どもたちを笑顔に、幸せにできる程度の健康を保ってきたことが何より嬉しいよ。」と答えました。

1977年にアランさんは自分のトラックを購入して以来、ボストンから30kmほど北東にあたる町ピアボディに場所を移しました。通常営業時期は4月~10月だそうです。

学校が長期休暇ではない通常の週であれば、朝5:30には家をでて、週に2回はトラックのアイスクリームを補充しに行くのですが、それにはだいたい3時間程かかるそうです。それから子どもたちが学校が終わるタイミングを見計らって、午後2時前くらいには準備万端で待機していると言います。

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学校が夏休みに入ると、お昼前の11時頃には路上にでて、いつもの手順で夜8時頃までアイスを売り続けるそうです。彼の人気はアメリカの人気テレビ番組「フード・ネットワーク」で取り上げられてからぐんと高まり、数々の地元メディアで紹介され、「アイスクリームおじさん、アランのファン」というfacebookファンページが作られるまでに。

真に地域に根差したお店である証拠として、アランさんはお客さんのうち9割近くは名前を覚えているといいます。中には特別に「アイスクリーム用口座」を作る保護者の人もいて、アランさんにある程度の額がそこから支払われる代わりに、口座のお金がなくなるまで、子どもたちは何度でもアランさんのお店に行ってアイスクリームを食べられる、というプリペイド式というから驚きです。

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今年で76歳になりましたが、まだまだ現役。父親の背中を追って、「父のように86歳になるまではアイスクリームを売り続けたい」という決意を語っていただきました。

「わたしのお父さんはいつも手をつないでアイスクリームのおじさんのところに連れて行ってくれるのよ。」と、ピアボディ在住のエイミーちゃん。

「私の息子はもうティーンエイジャーになったけれど、あの音楽が聞こえてくると、小銭を握ってアランに会いにすぐに外へ飛び出すよ。もう、家族3世代もお世話になるんだ。私たちにとって彼は間違いなく、永遠の「アイスクリームのおじさん」だね。」

[編集部・ちさき]