最も多くのギネス世界記録タイトルを持つ男:アシュリータ・ファーマン

ギネス世界記録タイトルを複数持つ人は少なくありませんが、ニューヨークのブルックリンに住むアシュリータ・ファーマンさんを超える人は、現在現れていません。

過去約30年、「できるだけ多くの記録を塗り替える」ことをライフワークにしてきた彼は、その生き様を通して、心からの夢と強い意志を持つ人は、世界一になれることを証明し続けています。

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記録タイトルを達成した数、600以上。現記録タイトル保持数、200以上。

アシュリータ・ファーマンさんは今まで、富士山の周りをポゴスティックで駆け回ったり、巨大なフラフープを回したりと、ありとあらゆるギネス世界記録タイトルに挑んできました。

世界各国で記録を更新するなか、彼と同じ情熱を持つ人たちに会ったり、アメリカのトークショーなどで演説を行ったりしています。

数十年にもおよび世間を騒がせてきたアシュリータさん。しかし彼はなぜ、ギネス世界記録タイトルに挑戦し続けているのでしょうか。

アシュリータさんが、複数のギネス世界記録保持者になりたいと思ったのは、彼がまだ子どもだった1960年初期のことでした。

毎年、ギネス世界記録の本が発売されると、それを読み、新しい世界一の人々を見て魅了されていたのだとか。

世界中の記録保持者のストーリーを読みながら、アシュリータさんはあることに気づきます。「体力が足りない」。記録タイトルを更新し続けるには、体力は重要な要素だと考えたのです。

ギネス世界記録の本がはじめて世に出たのが1954年の9月で、私はその4日後に生まれました。1954年は、ロジャー・バニスターが1マイルを4分未満で走りました。ギネス世界記録への憧れはそんなところから来ているのでしょうか。それとも、世界一になることで完璧さを感じることができたのでしょうか。いずれにせよ、子どもの頃にこの本を読みながら、そこに書かれた世界一の数々を目に焼き付けたことを覚えています。

2013年、チェーンソーをアゴでバランスさせ、ギネス世界記録を獲得する様子。この記録はその後、他者によって更新されました。

年を重ねると、ヨーガ指導者のシュリ・チンモイから瞑想を学ぶなど、他の趣味を極める一方で、子どもの頃の夢を忘れることはありませんでした。

そんな頃にアシュリータさんが学んだのは、自己超越の概念でした。「限界を越える。精神を育む。不可能が無いということを深く知ること。」これらの考えが、彼の世界一への記録を現実に導くのでした。

1978年、アシュリータさんはシュリ・チンモイの強い勧めで、ニューヨーク市の24時間自転車レースに参加しました。そこで彼は651.7 km の距離を走破し、何と3位に入賞したのです。驚くべきことに、アシュリータさんはレースに向けたトレーニングは行ってきませんでした。この快挙は彼の考えを大きく変え、強い意志を持つことで何でもできることを身を持って感じたのです。

アシュリータさんがその後、ギネス世界記録タイトルに挑戦するのは自然なことでした。彼が最初に挑戦した記録は、連続ジャンピング・ジャック(挙手跳躍)でした。しかし結果は失敗に。

それでも、ニューヨークでの出来事を経験したアシュリータさんは、努力を惜しむことはありませんでした。この意気込みが、ギネス世界記録保持者となるための下支えとなったのです。

何時間にも及ぶトレーニング、記録を達成するための基礎を学び続けた数週間後ーーアシュリータさんはついに、連続ジャンピング・ジャックでギネス世界記録タイトルに認定。1980年のギネス世界記録の本では、なんと元オリンピック選手のナディア・コマネチの隣に掲載されたのです!

そこからアシュリータさんは、"限界突破"の人生を突き進んでいきます。

彼は、友人との協力を得ながら、世界記録の保持数を一気に増やしていきました。自転車をあごに乗せながらトレッキングをしたり、ポゴ・スティックで1マイルを早く走ったり、フラフープを長時間回したり、牛乳ビンを頭に乗せながら自転車に乗ったり…。ありとあらゆる記録タイトルに、自身の名前を刻んでいきました。

現在、全ての大陸で記録を達成し、100以上の記録を保持している人は、アシュリータさんただ一人です。

記録に挑戦することは、私の精神的な成長の重要な一部となりました。ギネス世界記録の本を隅から隅まで読み込んで、やりがいがあって面白いものを探します。私が達成した記録の多くは、ジャグリングや一輪車など、子どもも楽しめるようなものが多いです。挑戦のために練習すること自体も楽しいのですが、練習していくうちに少しずつ上手になっていくのを実感できるところも、楽しみの1つです。

今はニューヨークに住むアシュリータさんは、数多くのメディアで取り上げられ、彼のギネス世界記録のキャリアを振り返るミニ・ドキュメンタリーまで制作されました。

人生のほとんどを新しい記録を達成することにささげてきましたが、その勢いはとどまることなく、新規タイトルの獲得はもちろん、他人に更新された既存記録の取り返しもしています。

アシュリータさんが特に思い入れのあるギネス世界記録タイトルは「誕生日ケーキにのったロウソクの数|Most candles on a birthday cake」。恩師であるシュリ・チンモイの85歳の誕生日を祝うべく、同士からの協力を得ながら達成したものでした。

現在では、アシュリータ・ファーマンの名前はギネス世界記録の挑戦と切り離せない存在。努力や情熱が、どのような実をもたらすのか…彼の生き様が、その答えの1つを物語っているのです。