80年以上もの間寄り添い続けた夫婦が、ギネス世界記録に認定されました。

松本政雄さん(1910年7月9日生まれ)、ミヤ子さん(1917年11月24日生まれ)ご夫妻が2018年7月25日に得た記録タイトルは、「存命中の最長寿夫婦(合計年齢)|Oldest living married couple, aggregate age」。記録取得時のふたりの年齢を合わせると、なんと208歳259日になります。

8月には25人目のひ孫を迎える予定で、大家族を持ったふたり……。彼らは80年以上もの結婚生活の間、さまざまな逆境を乗り越えてきました。

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大分県出身の政雄さんとミヤ子さんは、知り合いを通じて出会い、1937年に結婚。しかし結婚式を挙げるつもりで、ミヤ子さんが正雄さんの実家を訪れるとそこには婚約者の姿が見えませんでした。

当時神戸に住んでいた政雄さんは、兄弟の借金の肩代わりをして、実家に帰省する船賃を工面できなかったのです。そのためふたりは式を挙げることなく結婚することに。もしそのまま破談になっていたら、ギネス世界記録もなかったのかもしれなかったのです。

(右から)千鶴さん(次女)、ミヤ子さん、政雄さん、政雄さんの実兄、悦子さん(長女)、シゲさん(実姉)

結婚後、彼らが直面したのは『戦争』。政雄さんは第二次世界大戦まで3度の出征を経験しました。残されたミヤ子さんは、大勢の親族と一緒に暮らし、2人の娘を育てました。当時の様子を「物はなく不自由ばかり」と振り返るミヤ子さん。政雄さんが送ってくれた給料でやりくりをしたそうです。

当時ミヤ子さんは、「帰ってこないもの」と諦めさえ抱いたと言います。実際政雄さんが帰国したのは終戦から約1年のこと。本人と分からないくらいに痩せ細って故郷に戻ってきた正雄さんは「妻と娘に再会できて、嬉しかった」と振り返ります。

帰国後、7人家族にまでなった政雄さんとミヤ子さんの家庭。しかし戦後の生活は厳しいものでした。正雄さんは「とにかく物がなかった。3女も生まれた中で、着る物も食べる物にも困り辛かった」と、当時の状況を語りました。

娘5人と母親は、家事や下の子の世話など、お互いに助け合って暮らしていました。長女の北村悦子さんによると、雛人形が欲しいと親にねだったら、父親から「5人並んで座っとったらええ!」と言われてしまったという、今では家族の笑い話にしているような出来事もあったとか。

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2年前まではふたりきりで暮らしていた政雄さんとミヤ子さんですが、ミヤ子さんが家事全般をできなくなったので、現在は高松市内の自立型老人ホームでのんびりした生活を送っています。

政雄さんによると、ミヤ子さんは80年続いた食事作りから解放され「最高!」と喜んでいるのだとか!そして老人ホームのスタッフによる心遣いで、ドレスを着ることも。「80年前にできなかった晴れ姿を、今叶えることができている」と、ミヤ子さんは語ります。

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長女の北村悦子さん、3女の川口美津枝さん、5女の佐野博美さんによると、ギネス世界記録に認定されるには、ふたり合わせた力がなければ成し得なかったのではと語ります。

父の生命力がすごいのはもちろんですが、98歳まで炊事をしていた母の、縁の下の力持ちのたまものかもしれません。

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3女の娘である小澤綾さんも、今回の認定に誇らしく思っているそうです。

昔から大好きな、自慢のおじいちゃんとおばあちゃんです。子どもの頃は学校の休みのたびに帰省したり旅行に行ったりして、可愛がってもらいました。祖父母の元に集合していたので、親戚同士のつながりも深く、いとこ達とも仲良く過ごしました。私は特におばあちゃんっ子で、小学校から大人になるまでずっと文通をしていました。

一方で政雄さんは、子どもの頃の綾さんにとっては少し怖い存在だったのだとか。しかし大人になるにつれ、テレビのスポーツ観戦を一緒に楽しめるほどの仲になったそうです。

「大の阪神ファンで、勝つと手を叩いて喜び、負けると声を荒らげて悔しがっていました。この春頃からいよいよ目が悪くなり、大好きな野球や相撲観戦ができなくなって気落ちしています。なんとか、また(試合内容が)分かるようにしてあげたいです。」

ギネス世界記録の公式認定証と写真撮影をするために、家族が老人ホームを訪れると、政雄さんは「うどん屋に行く!」と言い出し、車椅子で近くのうどん店まで行ったそうです。長女の北村さんによると「香川に来たらおいしいうどんを食べさせたい」というのが、政雄さんなりのおもてなしなのだとか。

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これからも両親を支えつつ、娘5人も負けずに長生きしたいと言う北村さん。「家族全員が元気に過ごしていられるのも、きっと祖父母のDNAと強運を引き継いでいるから。娘5人、孫13人、ひ孫24人みんなが感謝しています」と語りました。

政雄さん、ミヤ子さん、おめでとうございます!