Towser the mouser wearing a crown

スコットランド、クリフに位置するグレンタレット蒸留酒製造所はあらゆる歴史と伝統を持っています。

1717年に違法的に運用されたのがスタートで、スコットランドで最も古い蒸留酒製造所の1つです。2012年には228リットルのウイスキーが入ったボトルを作り、ギネス世界記録「最大のウイスキー・ボトル|largest bottle of whisky」を達成しています。

そしてグレンタレットで最も有名なのは、タウザーちゃん(1963-1987)ではないでしょうか。最も多くのねずみを捕まえた"マウザー"としてギネス世界記録に認定されています。残っている記録によると、タウザーちゃんは生涯で28,899匹のねずみを捕まえていて、平均すると1日に3匹です。

Towser, world's greatest mouser

ウイスキー製造所はねずみが住み着きやすい場所。それは材料として使う大麦が保管されているからです。

ねずみたちは、おなかを満たすために近所からやってくるので、ウイスキーを作っている人たちにとっては厄介な存在なのです。その対策として、過去には猫が用いられていました。その頂点に君臨したのが、タウザーちゃんなのです。

タウザーちゃんにとって、グレンタレットは温かく、食事も十分ある居心地のいい場所でした。だからその場所をねずみから守るのは当然のことだったようです。

毎晩、自分のなわばりをパトロールし、ねずみを見つけたらすかさず退治しました。朝になると、床の上に転がっているねずみたちを蒸留技師が確認します。

タウザーちゃんの記録は、数日にわたって計測したデータに基づいた推測値。そのため正確な数字とは言えませんが、タウザーちゃんは亡くなるまでの23歳まで、同じくらいのねずみを退治し続けたので、推測値は十分現実に近いものだと考えています。

そしてタウザーちゃんが夕べに飲むミルクには、数滴のウイスキーが入っていました。これが長生きの秘訣、そしてねずみを捕まえる意欲の向上につながったのでは、と言う声もあります。

Glenturret distillery

タウザーちゃんが亡くなった1987年ころには、フロアモルティング(コンクリートの床に大麦を広げて、大麦を発芽させる手法)は廃止されていました。それに加え、より厳しい衛生基準が設けられるようになり、ねずみを捕まえる「マウザー」たちもいなくなりました。

グレンタレットはその後も猫を飼い続けましたが、それはねずみを捕まえるためではなく、見学客を呼び寄せるためでした。ちなみにタウザーちゃんの後継者であったアンバーちゃんは、ねずみを見つけたらすぐさま逃げてしまい、1匹も捕まえることができなかったそう。

タウザーちゃんの記憶は、『フェアリーズ・ライト・ハイランド・リキュール(Fairlie’s Light Highland Liqueur)』のボトル(肉球のプリント)、そしてグレンタレット蒸留酒製造所にある銅像を通じて、現在も生き続けています。