世界最大のタコ、ミズダコ

タコは、我々の想像力を超えるような驚きの秘密の数々を持っている。たとえば、彼らには3つの心臓と2つの脳があることを知っているだろうか。また、彼らには触手がないことを知っているだろうか。8本のぶら下がった付属肢は、正確には腕として知られており、そのうち6本は主に狩りと泳ぎに使用され、残りの2本は主に登るためと這うために使用される。

すべての動物と同じく、同じく種族の中でも一際目立つ存在の者もいる。 タコの場合は、ミズダコ(Enteroctopus dofleini)だ。最大で4 mに達し、世界で最も大きなタコの種として認定されている。

非常に大きなサイズまで成長できるタコ。驚異的な知性を持ち、おもちゃのような物やタッパーを開けるなど、物体を操作することもできる。

世界で最も大きなタコである、ミズダコ(GPOとも呼ばれる)について紹介しよう。 

この壮大な海の生物は、通常3年から5年の寿命を持つ。成熟した個体は通常約15 kgの体重だが、より大きな個体では50 kgに達することもある。

平均的なミズダコの腕の長さは約4.3 m。これはマットレス2つ分以上の長さで、フォルクスワーゲンビートルの長さにも当たる。腕の長さが9.1 mに達するという話もあるが、これについてはまだ公式には確認されていない。

ほとんどの人は、タコといえば、8本の腕を使って海中をのんびりと移動する生き物だと思うだろう。もちろんその姿も事実だが、ミズダコは逃げる必要がある場合は、噴射推進で移動できる、海でも非常に稀な動物の1つだ。最大で時速40 kmまで加速できる。

この決死のブーストは、外套膜を通して水を取り入れ、それを急速に、サイフォンと呼ばれるチューブ状の漏斗を介して排出することで繰り出される。サイフォンは、内側に大きな開口部を持ち、徐々に狭くなる形をしている。

この便利な技により、彼らはホホジロザメの速さまでに迫ることができる(ただし、短距離に限る)。

ご存知だろうか。ミズダコの噛みつきは、他のほとんどのタコと同様に毒性だが、人間に対して致命的なものではない。

捕食の王者であるミズダコのメニューは多岐にわたる。

内気な性格にもかかわらず、彼らはエビ、カニ、ホタテ、アワビ、ホンビノガイ、巻貝、ホンヤクガイ、巻き貝、ロブスター、魚、イカなどを捕獲する、熟練のハンターだ。 この海の巨人は、他のタコや、時折小さなサメさえも食べることがある。

狩猟の腕前の秘密は、獲物を捕らえて離さない吸盤だ。

驚くべきことに、1つの吸盤は16 kgを保持できるほどの力を持つ。この重さは、レンガ8個分とほぼ同じだ。その上で、各腕に平均280個の吸盤があることを考えると、この巨人が深海の恐るべきハンターであることを疑う者はいないだろう。

octopus with diver

彼らの食欲は、限界を知らない。

2012年5月、アマチュアの写真家、ジンジャー・モローンは、野生の巨大な太平洋タコがカモメを襲う様子を初めて捉え、話題となった。

タコの攻撃の瞬間を捉えたビデオは他にも存在するが、この映像は、ミズダコが特に腹をすかしている場合、移動できる範疇内に食べ物があれば、鳥だろうがなんだろうがそこに突進していく姿を明確に映した。

内向的なミズダコは、普段は孤独と暗闇を好む。獲物を確保した後は、誰にも邪魔されず静かに食事を楽しむために、巣に引っ込む傾向がある。

A GPO enjoying a delicious meal

タコの血は青い。

人間の血は鉄分を基にしているため赤いが、タコの血は銅を基にしており、体中で酸素を運ぶヘモシアニンがその青さの理由となっている。

ヘモシアニンは効率的な酸素運搬体ではないため、タコは酸素が豊富で冷たい地域を好む。

ミズダコは、また、9つの「脳」を持っている。マントル内の中枢脳と各脚の神経リングだ。このリングにより、脚と腕が、主要な脳皮質に干渉することなく、独立して刺激にそれぞれ反応する。

タコは知能の高さでも有名だ。研究によって、飼育下での彼らの行動は、目の前にいる人に応じて異なることが示されており、つまり顔の認識能力があることが証明されている。

文学や昔話ではしばしば恐ろしい怪物として描かれてきたがタコだが、この美しい生き物は、世界で最も知能の高い無脊椎動物の一つに数えられている。道具を使ったり、迷路や脱出困難な場所から抜け出したりする能力も持っており、実際にタコがタンクから逃げ出す動画を見たことがある人は少なくないだろう。

吸盤の力としなやかな脚のおかげで、子供用の安全ロックの容器ですらあっという間に解除できることすらあるというのだから、驚きだ。