dr nancy segal split

ギネスワールドレコーズの記録が、いかに多岐にわたるか、これを読んでいる皆さんには既知のことだとは思います。

約65,000件の記録を管理しているギネスワールドレコーズ。皆さんが想像しうるあらゆるテーマ、そして想像しえなかったものさえも、きっと全てに記録が存在するはずです。

もちろんこの管理は、専門家の助け無しにはなりえません。

今回の舞台裏シリーズでは、音楽、スポーツ、ロボット、園芸など、さまざまな分野で私たちに専門的な知識を提供してくれるエキスパートを紹介します。

双子のことなら、ナンシー・L・セガール博士の右に出る者はいません。

ナンシー・L・セガール博士

セガール博士は、米国フラートンにあるカリフォルニア州立大学の心理学教授であり、双子研究センターの創設者兼ディレクターです。

これまでに7冊の本を執筆し、さらに近々2冊の本の出版が予定されている彼女。双子に関するあらゆることに対して、まるで百科事典のような知識を持っています。

ナンシーは2014年からギネスワールドレコーズに協力して下さり、「異なる国で生まれた最初の双子|first twins born in different countries」や、「最も長く離れていた双子|longest separated twins」など、ありとあらゆる双子記録を我々と一緒に収集し、確認してきました。

「ギネスワールドレコーズから初めて依頼されたときは、とても光栄でした」とナンシーは語ります。

「そして、再び依頼が来たときも、本当に嬉しかったです」

最も長く離れていた双子の、エリザベスとアン

「ギネスワールドレコーズは、ロス・マクウィルターとノリス・マクウィルターという一卵性双生児のペアが始めたものでもあるので、とてもぴったりな記録です」と続ける博士。

ナンシー自身は二卵性双生児であり、姉のアンとの違いに着目したことが、研究のきっかけとなりました。

「姉と私は全く似ていません」と博士は話します。

ナンシーは妹より背が低く、髪はストレートだが、アンの髪はウェーブがかかっていると言います。

ニューヨークのアパートで育った二人。隣人たちからは、双子ではなく、よく似た姉妹が一緒に住んでいるのだと思われていました。

feet of newborn twins

ナンシーが双子の関係を研究するようになったのは、心理学を専攻していた大学時代のことです。

個人の適応性について論文を書くように言われたとき、学校で双子と引き離されたときのことを思い出し、教師がそういうことをするのが、果たしてフェアなことだったのか、と考えたのがきっかけだったそうです。

ナンシーはその論文でAをもらい、それから双子の専門家への道が開かれました。

「この仕事はとてもやりがいのある仕事なので、毎日が駄菓子屋にいるような気分といったところでしょうか」と博士は話します。

ナンシー博士は、常に双子のニュースを探しています。

a pair of twins

自分で検索したり、他の人から送られてきたりした記事の中から、ギネス世界記録に載るような双子の珍しい話を見つけることに楽しみを感じると言います。

そして、博士はその発見をギネスワールドレコーズに提案し、我々と共に検証し、記録の可能性を見つけていきます。

ナンシーはこれまで、双子の関係、一卵性双生児と二卵性双生児の競争意識の違い、さらには「バーチャルツイン」と呼ばれる、一緒に育った無関係の子供たちが、遺伝的繋がりを持たずに双子関係を持つ例について研究してきました。

博士はまた、外見が似ていても何の関係もない人々の性格を研究し、離れて育った双子や、生まれたときに入れ替わってしまった双子についても魅了されています。

ナンシーの著書のひとつ『Deliberately Divided』では、1960年代に双子や三つ子を分離させ、物議を醸したニューヨーク市の養子縁組機関出身の双子のその後を密かに追跡した研究について詳しく取り上げています。

twins wearing matching outfits

この論争的な研究は、『Three Identical Strangers』というドキュメンタリー映画でも取り上げられました。また、ナンシーはBBCの別のドキュメンタリー番組『Split At Birth』でも大きな役割を果たします。それだけでなく、この研究のその後を描いた『Split At Birth: Twins Divided』というBBCのドキュメンタリーにも、大きく関わりました。

また、ナンシーは二卵性双生児の研究も行っており、異なる民族を持つ両親から生まれた双子が、肌の色によって社会からどのような扱いの差を受けているかを検証しています。

ナンシーは、自著の執筆だけでなく、テレビ番組や映画、演劇、書籍の舞台裏の研究に関わっています。

また、彼女の研究成果は、裁判にも使われたことがあります。

現在、2冊の本を出版予定の博士。1冊目は『The Twin Children of the Holocaust: Stolen Childhood and the Will to Survive』。この本は、アウシュビッツの収容所で行われた残酷な実験を生き延びた双子の写真を集めた、人々に勇気を与える本です。3月21日に発売予定で、現在、こちらこちらこちらで予約受付中です。

2冊目は『Gay Fathers, Twin Sons: The Citizenship Case that Captured the World』は、イスラエル出身の男性と結婚した米国人男性の物語です。二人はカナダで双子を授かり、精子を提供してそれぞれ卵子を受精させました。

帰国後、アメリカ人男性の実子だけにパスポートが発行され、双子の弟に発給されたのは、観光ビザでした。

この事件は最高裁までもつれ込むほどで、私たちが知っておかなければいけない重要な事件である、とナンシーは言います。

こちらは8月に発売される予定です。

ナンシーはまた、双子に関する誤解を正すことにも情熱を捧げます。

「双子に関する間違った情報がたくさんありますが、私はそれを正すことができると思っています」と語る博士。

「私は実際に、『双子の神話』と呼ばれる本を書き、全ての神話を書き留め、それらを検証し、そこから生まれている誤解、誤情報を修正しました」

「例えば、双子は隔世遺伝すると思われています。もちろんそれは起こりうることではありますが、そういった決まりや、必ず起こるという科学的根拠はありません」

「問題は、このようなことが流布され、あたかも真実のように受け取られてしまうことです。私はそれを払拭しようとするのが好きなんです」